自衛隊の中東派遣は「成功」するか?|調査・研究名目で派遣した安倍自民党の大失態

憲法
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2019年12月27日の閣議で、中東海域での航行の安全確保のため、海上自衛隊の護衛艦1隻と哨戒機部隊の独自派遣が決定されました。

活動期間は20年12月26日までの1年間で、護衛艦「たかなみ」が20年2月下旬から現地での活動を開始。

中東海域で、日本船籍含む民間のタンカーなどが襲われる可能性があり、その場合は日本も”武器使用”も伴う海上警備行動を発令し、「不測の事態」に対処するとのことです。

今回の派遣の根拠法は、防衛省設置法の「調査・研究」であり、明白な軍事行動であるにもかかわらず、情報収集目的を名目とした「調査・研究」という形式で派遣するとのことです。

なぜこれが「調査・研究」なのか??

危険度が低いのであれば、まだそれでもいいかもしれませんが、19年6月、日本の海運会社が運航するタンカーがホルムズ海峡付近で攻撃されています。

いまだ真相は不明で、イランが攻撃したのか、それとも海賊船なのか、中東で暗躍する各宗派の武装組織なのか、まったく分からないままなのです。

中東では正規軍とは別に民兵や武装勢力が日常的に独自の作戦を実施しており、極めて情勢は厳しいものと言えるでしょう。

そんな中での自衛隊艦船派遣なのですが、ここにはいくつもの疑問点があります。「調査・研究」もその一つです。その点を解説していきたいと思います。

自衛隊の海上警備行動では民間船舶を守れない!?

憲法9条により法的根拠が曖昧な自衛隊

日本国憲法では自明の通り、軍隊も交戦権も放棄・否認していますので、自衛隊は存在自体がグレーゾーンです。

自衛隊の活動は常に法的根拠が曖昧となります。法的には軍隊が存在しないのですから、当然軍事活動だって存在してはいけないのです。

今回の自衛隊中東派遣も警戒監視活動とか、民間船舶護衛などの軍事行動として説明されてはいけないということです。

そこで今回の自衛隊の法的根拠は防衛省設置法第4条の18〔調査・研究〕という、実質と名目が釣り合わない法律の条文を援用することになります。

下記に、防衛省設置法の関連条文を掲載します。

☆防衛省設置法☆  

第1条(目的)この法律は、防衛省の設置並びに任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務等を定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するため必要な組織を定めることを目的とする。

第4条 防衛省は次に掲げる事務をつかさどる。その18 所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。

本来であれば、憲法9条を改正あるいは破棄して、自衛隊を”日本軍隊”と定め、その軍事活動に法的根拠を与えるのが筋です。

その法的根拠が曖昧なまま現地に派遣される自衛隊員は、現場で苦しい立場に置かれることになります。ならば、その苦しい立場とはどのようなものでしょうか?

海上警備行動では無線やスピーカーで警告しか出来ない…

調査・研究名目で派遣されましたが、実際は建て前であり、本来の活動は日本船舶含む民間船を襲撃から守ること。その点の是非はともかく、それで本来の活動自体が遂行できるのでしょうか?

自衛隊法第82条(海上警備行動)は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため必要がある場合は、内閣総理大臣の承認を経て海自は必要な行動を取れる、と定めております。

海上警備行動は警察権での対処であり、その武器使用は正当防衛や緊急避難しか認められておりません。

海上警備行動は日本の管轄区域での活動が想定されており、ホルムズ海峡付近で外国船舶が襲われた場合、日本の自衛隊は救助に向かえない。

無線やスピーカーで警告するくらいの行動しか出来ないというのが防衛省の見解です。

国際法上の軍隊と警察の違い|海警局に軍事的権限を与えたChinaの意図

無線で警告するという警察権での対応で自国船舶だけは確実に守れるのか??

今回の自衛隊中東派遣で”外国船舶は救助しませんよ”ということに対する国際的批判は当然として、自国船舶は守れるのでしょうか?解答はNO、否です。

大手メディアもその点は知識不足なのか、全く報道していませんが、基本的な知識の整理として、まず警察と軍隊との違いです。

装備の規模が違う点もそうですが、法的には全く性質が違います。軍隊と言うのは国際法上でとても大きな権限が与えられているのです。

例えば、尖閣諸島でのChinaと日本のにらみ合いですが、Chinaは2018年7月にChina公船の部隊を軍事組織の傘下に入れ、軍隊と連携した動きを見せております。

これを大手メディアは「日本への圧力を高めてきた」と報じていますが、若干Chinaの意図するところを間違えています。

以前は海警局という、日本でいう所の海上保安庁の権限で活動していたところ、それを軍隊の行動とするようになったのです。それが決定的に事態を変えるのです。

軍隊は公船に対して撃沈する権限を唯一与えられております。一方で、警察権というのは、あくまでも自国内での法執行作業しかできませんので、自国の法律の範囲外に対しては手出しが出来ません。

明らかに外国の公的な任務を帯びており、その国の主権に基づいて行われている活動や対象には手出しが出来ません。警告くらいしか出来ないのです。

ですから、Chinaは今後海上保安庁の船に対しても撃沈することができる法的根拠を、海警局などの自国船舶に与えたということです。

自衛隊の海上警備行動は警察権での行動・対処なのです。

国際法上で最強の権限を与えられている軍隊を持たないのは大きなデメリット

もしイランなど外国の公船や軍隊に襲撃されたら、海上警備行動という権限で対処する自衛隊は手出しが出来ない。

国籍不明の海賊や民間の武装勢力に対しては実力行使は可能ですが、米国は明らかに「イランが関与している」「イランの国軍が動いている」と主張しています。

そのような混とんとした状況、民間の武装勢力だけでなく、外国軍の動きも見え隠れするような状況だから、国際法的に最強の権限を与えられている”軍隊”で対処するしかないのです。

日本は国際社会の極めて簡単な初歩的問題に対し、0点解答をしているのです。自衛隊という「警察」で対処しようとしているのですから。これでは対処できないでしょう。

日本国民の皆さんの中には、軍隊など持たなくてもいいと今まで思われていた方はたくさんおられると思います。

しかし、国際法上で最強の権限を与えられている”軍隊”を持たないのは、国際社会での大きなデメリットと言わざるを得ないでしょう。

法的に警察では絶対に対処できない領域があるんです。

そのため諸外国は軍隊を保有しているのです。軍隊はべつに危険な存在ではなく、必要だから保有しているのです。

他国をいじめるためというような子供っぽい理由ではまったくありません。

防衛出動と自衛権行使|国際音痴の安倍自民党による大失策

自衛権行使に100年前の軍事環境を想定した国際音痴の日本政府

自衛隊も防衛出動により「軍事行動」が認められているという見方もありますが、

日本では自衛隊法第76条1項にて総理大臣の承認を経て防衛出動命令を発し、その第88条にて我が国防衛するための武力行使を行える、とあります。

その武力行使は国際法上自衛権によってのみ正当化され、その自衛権行使の国際法上のルールを、いまでは死文化されている、、、、、、、、国連憲章第51条の”武力攻撃発生時のみ自衛権発動は認められる”に見出し、

その自衛権をまたさらに国内法と整合する形で、必要以上に自衛権行使を厳格化しております。

第2次安倍内閣が2014年7月1日に閣議決定した自衛権の新・三要件の一つは、

”我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること”とされております。

まったく国際音痴としか言うしかない安倍自民党による外交政策上の大失点です。

安倍氏も含めて、誰もがこの言葉の意味を理解していないでしょう。いったい”国の存立が脅かされ”というのは具体的にどういう状況でしょうか。

自衛権行使を現場の兵士より取り上げる日本政府??

自衛権は軍の兵士が現場で活動する法的根拠であり、例えば、兵士が戦場で敵に遭遇し、銃撃して撃退します。

その法的根拠が兵士一人一人に与えられている自衛権です。にもかかわらず、国際音痴の日本政府は、

「日本には兵士がいなのだからそういう危険性はそもそもない(?)。だから、自衛権は本来は行使する機会がまったく存在し得ないもので、一般の兵士から取り上げて、自分たち政府が取りあえず自衛権は○○なものであると定めてみました」

という形になっております。

新・三要件は国連憲章第51条の武力攻撃を定義に含めていますが、国際音痴の日本政府は「武力攻撃とは何十万もの敵国軍隊が攻めてくるような状況だ」と、今から100年近く前の軍事状況でのみ通用する見解を掲げております。

弾道ミサイルが飛び交う戦場でそんな状況は起こりえないし、それを武力攻撃と認定するのであれば、日本の反撃は決定的に遅れてしまいます。

議論の内容があまりにも古いんです。100年近く前の前近代的な議論をしているのが、今の日本政府でしょう。

日本の防衛出動も自衛権行使も現代の国際社会ではまったく通用しない。日本船舶は守れない。ホルムズ海峡のケースでは、たぶん自衛権行使など出来ないでしょう。

まとめ:軍隊の権限を与えられない自衛隊は今後も苦しい立場に

最近では安倍加憲により自衛隊の法的根拠を憲法上に定めるとありますが、それも正直意味がないでしょう。

自衛隊は軍隊ではない、別の「なにか」であると証明されるのが精いっぱいであり、その自衛隊が軍隊としてその存在や行動が認められるわけではないので。

本質的に言えば、いまの自衛隊という組織ではダメなんです。”日本軍隊”としなければダメなんです。

毎年5兆もの国防費を今後もどぶに捨て続けることになります。その点を正直に説明しない安倍自民党の姿勢は問題です。

今回の自衛隊中東派遣は、本来、あらゆる状況を想定して、最強の権限と装備を有した軍隊が法的にも実力的にも対処し得るようなケースなんです。

そこに装備はともかく、権限の面で非常にあやふやな自衛隊を派遣するのは0点解答でしょう。正当防衛や緊急避難などで対処するというのは、相手の第一撃を容認することと等しいです。

外国軍隊や外国の公的な船舶に対しては一方的に撃たれるしかありません。彼ら自衛隊が攻撃されて時間を稼いでいる間に、民間の日本船舶を逃がすという作戦しか取れない。

自衛隊艦船は非常に苦しい立場に置かれることになります。

自衛隊を軍隊と定めず、ただ軍隊ではない「別のなにか」という状態で固定化するような安倍加憲は自衛隊員を非常に苦しい立場のまま留めることになる。

それでいいのかと、選挙戦で本来は政治家が訴えかけなくてはいけない問題です(了)。

※自衛隊と憲法9条に関してはぜひ下記の記事もご参照ください。

60秒で読める!この記事の要約!(お忙しい方はここだけ)

要約
  • 憲法9条により法的には”軍隊”が存在しない日本では、軍事行動も存在してはいけない。よって、「調査・研究」名目での派遣となった
  • 調査・研究名目で本来の活動は遂行できるのか-海上警備行動と言う警察権の対処では、外国軍隊や公船には対処できない。国際法上、軍隊や公船相手には”軍隊”しか対処する権限が与えられていない
  • 自衛隊法第76条、第88条の防衛出動は自衛権とリンクしており、その自衛権行使の議論は100年前の国際環境を想定している古い議論だ
  • 国際法上、軍隊と警察はその機能・権限が大きく違う。自衛隊と言う「軍隊ではない別種の組織」と定めるのは、デメリットしかない
  • もし中東で外国軍隊か公船に民間船舶が襲われたら、自衛隊は反撃できない。一方的に攻撃され、民間船舶が逃走する時間稼ぎしか出来ないのが現状である

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