風船爆弾と原爆投下は同じだ??非戦を訴える戦争犯罪の語り部の間違い

政策争点
Photo by Daniil Vnoutchkov

先の大戦で日本は被害国ではなく、加害国でもあったと伝聞される方がおられます。次に『戦争はよくない。戦争はよくないんだ』と不戦の伝道師のごとく語るのです。

その度に私は違和感を覚えます。

戦争がダメなのではなく、戦争犯罪がダメなのであって、その戦争犯罪の中でももっともしてはいけない民間人大虐殺を行ったのが米軍なのです。

米軍の原爆投下、東京大空襲(東京大虐殺)などは有名だと思います。

が、そういうことを言うと、日本だって民間人を標的に軍事攻撃をしたと、言い返す方がいます。

『風船爆弾をしたではないか!』と顔を真っ赤にして応えるのです。それも日本人が、です。

原爆も風船爆弾も民間人を標的にした軍事攻撃であり、日本もアメリカもどっちもどっちなのだと。いまからこの違和感の正体を突き止めます。

風船爆弾と原爆は同じ戦争犯罪?違和感の正体を探る

風船爆弾と原爆はその規模が全く違う

風船爆弾は5千発ほど飛ばして、1千発くらいが米国本土に届いて、何人か死傷者が出たのは確かです。

しかし、原爆とはまるで規模が違うでしょう。日本人数万人の命が、米国人1人と同じ価値だとでも言うのでしょうか。

たぶん、米国人だってびっくりする発言を他ならぬ日本人がするわけです。

その点も大きく問題なのですが、実はこの風船爆弾は戦争違法行為とする見方がそもそも間違えているとすれば、、どうでしょうか。

語り部の方で「私は風船爆弾を作っていたんだ。なんて悪いことをしたのだろうか。この国は間違ったことをしたのだ」と主張する方がおられます。

残念ながらこの方の主張の方が間違っています。国は間違ったことをしていないのです。

みなさんは、この方の主張のどこが間違っているのか分かりますか??まずは基本整理として国際法の報復と復仇の違いを解説します。

国連憲章はほとんど機能せず、曖昧だと常に批判の対象に

2020年1月現在、イランと米国の争いが深刻化しています。

米国がイランの国民的英雄であった革命防衛隊司令官をイラクの空港で軍事爆撃し殺害したからです。

これをすぐに米国の国連憲章違反であり、先制攻撃による侵略行為だと判断するのは少し間違っています。

大前提として、まず現在の国際社会では国連憲章などほとんど機能していません。

『武力行使は違法行為であり、現在では大きく制限されている』と主張するのは日本の学者やメディアのみです。

あの国際司法裁判所でさえも、国連憲章の規定は曖昧であるとし、伝統的な国際法の自衛権議論を中心に判断しますし、海外ではまったく武力行使に制限を加えていないと語る学者も多くいます。

ですから、米国の武力行使も国際法の視点から正当化できる余地はあります。

国際法上の報復と復仇の違い|大手メディアの国際音痴

アメリカがまったくの国際法違反をしていると頭から決めつける態度は控えるべきでしょう。国際法はそんなに明確なものではありません。

大手メディアも「イランと米国は報復合戦が今後起こるだろう」などと述べております。

一般的な、辞書的な意味での『報復』として使用しているのかもしれませんが、実はそれがまったくの国際社会音痴であることをさらけ出しています。

この場合は、正しくは『報復』ではなく『復仇』が適切なのです。国際法での『報復(retortion)』は、相手国の行為が国際法上の義務違反であるかどうかにかかわりなく、その自由な裁量によって行える対抗措置をいうのです。

例えば、外交関係断絶とか、貿易その他の便益の停止など、その国の主権的権能に基づいて行える措置のことを言うのです。

『復仇(reprisal)』とは、相手国の国際法違反の行為に対抗して、その違法行為を止めさせたり原状回復させたりすることを狙いとして、行われる実力行為のことを言います。

本来であれば、国際法違反行為に当たりますが、この場合はその違法性が阻却されることになります。

現在では、”武力復仇”に関しては国際法上禁止されているとの見方もあり、被害国は非軍事的な実力(条約義務の一方的停止、在留外国人の資産凍結又は追放など)を用いて対抗できるという考えが強いかもしれません。

個別国家の報復や復仇が国際法の法執行機能の中心

国際社会は基本的に無秩序でアナーキーな世界であり、復仇も報復も個別国家が行う伝統的な法執行機能の中心であります。

軍事的分野においても国連の安保理がまったく機能していない以上は、教科書的に軍事復仇は禁止されているという考えは現実の国際社会で受け入れられておりません。

軍事的又は非軍事的復仇行為がいまだ国際社会の法執行機能の中心であるのは昔も今も変わりがないのです。

国際社会には警察官も裁判官もいませんので、自分たちで相手の違法行為を裁く!それが原理・原則なのです。

そして、今回のイランの場合は、米国より国際違法行為を受けており、軍事的復仇によりイランは米国に対抗措置する権利があるでしょう。

もしイランが復仇と言う対抗措置を行わなければ、米国の行った行為はイランでさえ認める正当な行為であり、まったく無法な行為ではないとなります。

イラン側でさえ認めたのだと世界は認識するでしょう。ですから、米国でさえ”イランが軍事的復仇をしてくるだろう”と当然予想しております。

イランに対して、”米国の軍事施設を攻撃してくるなんて国際法違反行為だ”などと言いません笑

大手メディアは報復ではなく”イランは国際法に基づいて正当に軍事的復仇を実施し、その米国の国際違法行為の停止又は原状回復を求めた”と、

そのように解説するのが実は正しいのです。

日本の風船爆弾は国際法違反を阻却される正当な法回復行為

日本の風船爆弾は国際法執行機能を担保したもの

もうこの時点で、ここまで読み進めて来られた読者の皆さんは質問の回答が分かったと思います。

日本の風船爆弾は、原爆投下や東京大空襲(≒東京大虐殺)を受けて、その米国の戦争法違反行為(現在は国際人道法違反行為)を停止するべく行われたものなんです。

ですから、もし日本が何の復仇行為に頼ることなく、そのままに見過ごしていたら、まったく米国側はその違法行為を止めようとも思わないですし、被害国である日本の被害は増すばかりです。

国際社会では誰も助けてはくれない!自ら救うものこそ救われるのであり、自助行為によりその国際法執行機能を担保し、そうやって国際社会のルールを守っていくしかないのです。

「風船爆弾をした日本は、原爆投下の米国を責めることなど出来ない」という主張は大きく間違っているのです。

いわゆる日本の戦争犯罪の語り部として、不戦の主張を伝道されている方がおられますが、彼らの主張は一見正しく聞こえるのですが、

実はとんでもない間違いを秘めていることが理解できます。

車をいたずらされるAさんはどうすればいいのか?(仮定)

例えば、こういう仮定をしてみると分かりやすいかもしれません。

Aさんはよく自分の車にいたずらをされます。そのいたずらをするBさんはそれが楽しくて仕方がないのです。いくら口で文句を言っても止めてはくれません。

Aさんは実力行使に出ます。それは、Bさんの車にいたずらをし、もしまた自分の車に同じようないたずらをしてみろ!またやり返しにくるからな!と。

それ以降、BさんはAさんの車にいたずらをするのを止めたそうです。

このAさんという人物はとんでもなく悪い奴だ!このAさんはBさんと同じくらい悪い奴だ!!

この主張に違和感を感じられる方が多いのではないでしょうか。

誰が考えても悪いのは、Bさんでしょう。しかし、Aさんは悪いことをした。とんでもないことをしたのだと語るのが、

先に登場した、日本は戦争加害国だと語る語り部の主張なのです。ですから、違和感を感じるのです。

まとめ:国内社会での模範的な解答は、国際社会では落第点??

結論として、日本の風船爆弾は正当な国際法執行機能を担保したものであり、日本側に全く非はない。

もし日本が風船爆弾などを飛ばさなければ、それこそ国際社会の一員として失格。みんなでルールを守っていこうとする国際社会での裏切り行為となった。

最後に、一般的な意味の報復と言えば、仕返しをすること。どっちもどっちなのだという印象を受けてしまいます。

メディアの報道は国際社会の性質を見落とした間違った主張なのです。

国内社会では警察もいて、裁判官もいて司法が成立しているのですから、先の仮定の話に言及すれば「Aさんは警察や役所、自治会や町民会などにまず相談するべきだ」ということになります。

Aさんの行為も理解はできるけど、正しくはない!という結論になると思います。

ですが、それは国内社会での合格点であって、国際社会には警察も裁判官もおりません。

Bさんが「俺は警察に捕まるのも、裁判に突き出されるのも拒否する!」と言えばすごすごと引き下がるしかないのです。それが国際社会です。

大手メディアは国内社会と国際社会とを混同して理解しているから、こういう間違いをするのだとも言えるでしょう。

日本は戦争加害国だと語る語り部にも共通する間違いです。

自分は戦争で人を殺してしまった、と後悔するのは個人の自由です。しかし、自分の後悔のレベルを超えて、国まで間違った行為をしたのだと語るのは、間違った主張なのです。

それは国際社会の構造を知らない上での無知なのか、それとも何か確信犯的な主張なのかは分かりませんが、、(了)

※半世紀以上も昔の戦争をいまだに語り続ける私たち日本人の不思議なメンタリティに関してはぜひ下記の記事もご参照ください。

60秒で読める!この記事の要約!(お忙しい方はここだけ)

要約
  • 2020年1月現在、米国とイランはお互いに報復合戦をしそうな気配だ➡間違い!!
  • 一般的な意味での『報復』と国際法的な意味での『報復』は全く違う。報復は相手国の国際違法行為の有無に関係なく行える、国家の主権的権能にもとづく行為である
  • 相手国の国際違法行為を中止したり、原状回復を求めて行う実力行使は『復仇』である。復仇による実力行使は国際違法性を阻却される。イランが行おうとしているのは報復ではなく復仇
  • 大戦時の日本による風船爆弾投下も、国際違法行為を阻却される復仇であり、国際法上正当な行為。報復や復仇は現在でも中心的な役割を持つ国際法執行機能のひとつである
  • 日本の大手メディアも不戦伝道師の語り部も、国際社会と国内社会とを混同し、その構造の違いを理解していない。それが間違った主張を生む根源となっている。奇妙な違和感の正体でもある

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