今さら聞けない!議院内閣制と大統領制の違いとは!?これだけ違うの??

政治改革
Photo by Marco Oriolesi

2020年1月に台湾で総統選が行われ、民進党の蔡英文総統が当選しました。

台湾では総統を住民が直接選んでいるので、これは二元代表制(大統領制)のはずです。

二元代表制は、議会(立法府)と行政府(の長)をそれぞれ国民が選びます。一般に、大統領制のことを指します。

一方、日本は一元代表制(議院内閣制)です。国民は国会議員(立法府)しか選べませんよね。

※一元、二元とは、国民が選べる代表者の数を指します。後ほど詳しく解説します。

それぞれの政治制度のメリット・デメリットをあげながら、どのように政治運営がなされるのか。違いや問題点はどこにあるのか?丁寧に解説していきます。

有権者が代表を選べる数で決まる|議院内閣制と大統領制の違い

議院内閣制や大統領制を、それぞれ一元代表制と二元代表制ということもあります。

この一元や二元というのは、有権者(国民)が代表を選べる数を指しております。

日本は一元代表制。一つの代表しか選べません。

代表とは、それぞれ立法府と行政府(政府)のことを指し、日本では行政府の代表は選べず、立法府の代表のみ選べる政治システムとなっております。

わかりやすく言えば、内閣総理大臣や大統領など、国のリーダーを直接選べないのが一元代表制です。

一方、有権者が行政府の代表(大統領)も選挙で選べるし、議会議員も選挙で選べるのが二元代表制です。

これだけは押さえておきたい!議院内閣制と大統領制の違い

両者の違いは、立法府での法律案に対する決議・表決システム

立法府において一番重要なのは議事です。どのように法律案を提案、審議し、表決するかという手続きのことです。

一元代表制、つまり議院内閣制では政党投票(party voting)が当たり前です。党議拘束とも言われます。

国会法では、各議員は自分の好きなように賛否を表決で決めていいことになっております。しかし、党議拘束は、政党ごとに賛否をあらかじめ決めておいて、それに所属政党議員は従うというものです。

一方、大統領制の下では党議拘束はありません。議員が自由に賛否を表明します。

党議拘束は、一見すると自由な審議・表決を禁ずるように思えますが、これは”議院内閣制”というシステムからも当然要求されることであります。

政党内閣制が自然発生的に生まれる!(議院内閣制)

この議院内閣制というのは、責任内閣制とも言われ「内閣が議会に対して責任を負う」制度のことです。言いかえると、「内閣の存立は議会の信任に依拠」します。

わかりやすく説明すると、

日本は一元代表制であり、内閣総理大臣は有権者ではなく国会議員が選びます。国会議員が選んだ人が内閣総理大臣となり、内閣を組織します。

議会には内閣不信任決議権が与えられており、もし議会が「あの人が総理大臣ではダメだ!辞めささせたい!」と判断すれば、それが出来るシステムとなっております。

つまり、内閣の存立は議会の信任に依拠します。

一方で、内閣には議会の解散権を与えられており、自らを不信任した議会に対して解散させ、国民に信を今いちど問うという反撃方法が用意されております。

議院内閣制で安定した政治運営を行うには、議会から強固に支持されることが不可欠で、内閣(政府)は議会に自分たちを支えてくれる支持集団をつくろうとします。

これがいわゆる政党で、議院内閣制から政党内閣制とういものが自然発生的に生じます

ある政党が議会多数派を取り、その党首が内閣総理大臣となり、内閣を組織します。

居眠り国会議員が続出する日本の国会・・・(議院内閣制)

居眠り国会議員が問題視され、それは党議拘束があるからだといわれます。国会で議論しても意味がない。なぜなら、党議拘束でもうすでに結論が出ているからだというご意見です。

その通りです。ですが、党議拘束をなくしてしまうことは絶対にできません。

党議拘束とは、有権者に対する政治的無責任を回避し、政策実現を効率よく達成するシステムです。より具体的に説明しますと、

党議拘束が存在する大前提として、まず政党の存在があります。

有権者の選挙行動を分析すると、「普段から支持する政党がある」や「各政党がかかげる政策や姿勢などを比較検討して決めた」というのが主な投票行動です。

もし党議拘束、つまり「○○党の議員は必ず○○党の□□政策に賛成すること」ということが約束されなければ、政党に対する信頼がなくなりますしょう。

「国会議員は国会法で自由に議論し、法案にも自由に賛否を表明できるのだから、各政党の議員が自由に決めればいい」ということになれば、

有権者は政党単位で立候補者を選べなくなってしまいます。

政党を成り立たせる党議拘束(議院内閣制)

政党の存在意義は、政党の主張する政策にあります。国民は、その政策に賛成し、実現することを願い投票します。

現行憲法では多数決による表決を採用し、政党党首にも各議員と同じく1票が振り当てられております。

もし党議拘束をなくしてしまうと、党首の主張も多数の中の一つでしかなく、これでは党首も政党もなくなってしまいます。党首一人が1票を投じても、法案は通りません。

ある政党の政策を支持したから投票したのに、その政策を実現する上での担保が何もないとしたら、有権者の方にとって非常に無責任でしょう。

ですので、党議拘束がなければ、政党と言う存在自体が成り立たなくなり、どのような政策が実現されるかもまったく不透明になってしまうのです。

もし党議拘束がなければ、有権者の政党選択の意味がなくなってしまいます。

党議拘束により、政党を成立させ、その政治責任(≒政策)の実行可能性を担保することが、私たち有権者の意見や利益を実現する上でも不可欠です。

一見すると自由な審議・表決を制度に見える党議拘束ですが、実は必要不可欠なものです。

※もちろん、居眠り国会議員を許すという主張ではありません。会社でも学校でも、居眠り行為が許されるなんてことはありえません。

常に党派分裂状態!?大統領制をもっと詳しく知りたい!(大統領制)

二元代表制の大統領制では、そもそも党議拘束(=政党投票 party voting)が存在しません。

政策・法案ごとにそれぞれ賛同者が集まり多数派を形成することになります。

その表決方法は交差投票(cross voting)と言われ、一方の政党議員の過半数と、もう一方の政党議員の過半数とが対立している状況です。

アメリカで言うならば、共和党の51%が賛成(49%が反対)し、民主党の49%が反対(51%が賛成)しているような状態です。日本では常に党派分裂を起こしている状況が、”常態”なのです。

では、議院内閣制で説明したように、党議拘束がなければ政策が実現されない。つまり、安定した実効性のある民主政治が成立しないかといえば、そうではありません。

その政治制度の違いは、表決のみではなく、議会と政府の関係にも表れております。

議会の信任に依拠しない!?独立した行政権を持つ大統領(大統領制)

議院内閣制の日本では、議会の多数派から内閣が組織されるので、議会と内閣の間に対立関係が存在することがありえません。

ですが、大統領制の下では議会VS政府(大統領)という構図が常に現れます。

アメリカでは、一般に共和党の大統領の際は、議会の多数派は民主党であることが多いのです。

とはいっても、議院内閣制と違い”大統領の不信任決議”なるものが議会に存在せず、また一方で”議会の解散権”も大統領には与えられていません。

両者はそれぞれ独立しており、大統領と議会の権限があらかじめ明確に規定され、

その権力分割と抑制均衡が大統領制の基本的特徴となっております。

つまり、大統領は議会の顔色を窺わないで自由に行政権を行使できます。これが強力な行政府の運営を可能とするのです。

日本と違い、両者が手をたずさえて議会運営をおこなうという前提がそもそもありません。

アメリカの大統領には閣法(政府提出法案)が認められておらず、100%議員立法となるのも日本とは異なります。日本では、ほとんどが政府提出法案です。

ですが、これは制度上の建て前です。大統領は自分で法律案を作成し、仲の良い議員にお願いして代理で法案を提出してもらっています。

政党投票がない。つまり、議員が一人ひとりの意思で投票をするというシステム。大統領はいくらでも切り崩し工作を行えます

仲の良い議員に電話したり、ご飯やゴルフに誘って自分の通したい法律に議会で賛成してくれるようにお願いします。

まとめ

一元代表制などの、一元とは有権者が国の代表を選ぶ数のことです。

一元制が議院内閣制、二元制が大統領制です。米国では、議員も大統領も市民の投票で選べます。一方、日本では議員しか選べず、総理大臣は選べませんよね。

議院内閣制は内閣の存立が議会の信任に依拠します。つまり、議会の多数派が内閣を組織するということです。

よって、政党内閣制が必然的に生じ、党議拘束が政党の成立のため、議会運営のために必要となります。

一方、国民に直接選ばれる大統領は、議会に解任されることなく、その地位は一定期間保障され、議会からの信任にはよらないので、独立した強力な行政権を行使できます。

ですが、大統領制は失敗することが多いです。強力な行政権が肥大化し、議会に対する法案の拒否権をもち、いずれは大統領勅令により立法権も手にする場合も。独裁化。

となると、権力均衡が崩れて政局が混乱します。やがてはクーデタや軍事独裁政権が誕生し、民主政治が崩壊することに。ラテンアメリカ諸国ではよく見られました。

一般に、議会制と大統領制のどちらがより良い制度であるのかという質問は、非常に答えにくい質問です。

ともかく、議院内閣制も大統領制もいろいろとあり、機能していない議院内閣制もあれば、機能している大統領制も当然あります。

両者の違いや問題点を踏まえて、その国柄に合った制度を採用することが重要です(了)。

60秒で読める!この記事の要約!(お忙しい方はここだけ)

要約
  • 有権者が立法府の代表しか選べないのが一元代表制、立法府と行政府の代表を二つとも選べるのが二元代表制である。前者が議院内閣制、後者が大統領制を指す。
  • 議院内閣制は責任内閣制とも言われ、内閣の存立が議会の信任に依拠する。その議院内閣制から政党内閣制が自然発生的に生じ、政党が成立するには党議拘束が必要となってくる。この有無が大統領制との違いとも。党議拘束とは、政党の政策に従うことを政党所属議員に約束させること。すなわち、Aという政策・法案をその政党が国会で提案したとき、必ず賛成票を入れてね!ということ。
  • 党議拘束は、議院内閣制において有権者に対する政治的責任を果たすうえで、なくてはならない手段。もし党議拘束がなければ、政党の提示する政策全てがただのスローガンになってしまうから。
  • 一方、大統領制は交差投票が採用され、各政党議員が自由に審議し表決する。つまり、○○党議員であっても、○○党の大統領の主張に反対することができる。大統領制のメリットは、大統領が議会の信任に依拠せず、独立した強力な行政権を行使できること。つまり、議院内閣制と違い、議会から「クビ」にされることはほとんどない。議院内閣制と大統領制、どちらの制度がよりベターであるかは、学者間でもはっきりと答えは出ていない。

 

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