北朝鮮拉致事件の現状 実はもう「解決」済み?日本国民の二つの誤解とは

政策争点

北朝鮮拉致事件はなぜ解決しないのでしょうか。理由はいくつもありますが、

一つは、日朝両政府間ではすでに「拉致問題は解決済み」となっている驚くべき事実があります。もう「解決済み」となっている事件に対して、「解決」を目指すということは不可能です。

元安倍首相もしばしば拉致事件関連のイベントの場で「解決」していると何度も宣言しています。

「日朝平壌宣言をベースに、拉致問題解決を目指します」というのです。ですが、日朝平壌宣言は拉致事件を「解決済み」とした国家間の決め事です。

日本国民には理解しがたいところですが、事実、拉致問題は対外的には解決しております。

日本政府はしばしば「拉致再調査をお願いします」と北朝鮮に頭を下げています。

私も、以前は政府の再調査という言葉に首をかしげておりました。

「再調査?なぜ日本政府は拉致被害者を返せと言わないのか?」と思ったからです。

ですが、詳しく確認すると、2002年の小泉訪朝団により結ばれた日朝平壌宣言で拉致事件は解決済みとなっております。日朝平壌宣言は両政府間でむすばれた国際条約のひとつです。つまり、正式な国同士の取り決めなのです。

本記事では国際法をベースに、この点も詳しく解説していきます。

ともかく拉致事件の真の解決のためには、拉致事件を「解決済み」とした、この日朝平壌宣言をまず破棄しなくてはいけません。

本記事では、北朝鮮拉致事件未解決の理由。そして解決へ向けてのロードマップまで、わかりやすく解説していきます。

拉致問題は対外問題ではなく、国内問題である

「北朝鮮という国相手だから拉致問題は解決がむずかしい」

しかし、実際は全て日本国内の処置で完結いたします。拉致問題は対外問題ではなく、国内問題といえるです。

極端な話、「拉致は解決出来ないのではなくて、日本政府が解決しないだけ」です。簡単にその国内的な処置を列挙しますと、

北朝鮮の実質的な在日大使館である朝鮮総連の破防法適用による強制解散。超法規的措置で在日朝鮮人を主とする拉致加害者たちの数十年に及ぶ懲役あるいは禁固刑、もしくは国外追放や強制送還の厳格な法施行など。

そして、致致問題を解決済みとした小泉首相(当時)が北朝鮮と締結した日朝平壌宣言の破棄。

これらのことをしない限り、いつまでたっても拉致被害者が日本に帰国することはないでしょう。

特に、朝鮮総連の解散、および関係者の国外追放は、北朝鮮側の泣きどころです。

なぜなら、朝鮮総連から北朝鮮への何千億円もの送金や技術提供で、北朝鮮という貧乏国家が存続してきたのですから。この送金により、核開発資金や金王朝の娯楽費まで出されてきました。

いくらでも日本政府は北朝鮮政府に圧力をかけられる立場にあります。

また、拉致事件実行犯を逮捕することは、彼らと日本人拉致被害者を交換するという司法取引の材料ともなります。したがって、国内処置だけでも北朝鮮拉致事件は十分に解決の見込みが高い。

拉致問題に対する日本国民の二つの誤解

拉致問題に関する日本国民の誤解は二つ。

①拉致問題の未解決理由は、北朝鮮に原因があるという誤解②北朝鮮の主張する「拉致はすでに解決ずみ」とする言い分は、まったくの的外れであるという誤解

①つ目の誤解は先ほど説明したとおりです。たしかに北朝鮮という一国家が相手であるから、解決が難しい点はあります。ですが、国内処置でも十分に北朝鮮政府の方針を変えさせることが可能です。

②つ目の誤解ですが、残念ながら、北朝鮮の主張のほうが正しい。対外的には、拉致事件はすでに解決されています。

日本政府は拉致問題は解決済みであるとした日朝平壌宣言を今も破棄していません。

一方、日本国民に対しては「まだ解決していません」とダブルスタンダードの立場を取っております。

拉致問題が解決しないのは、もうすでに拉致問題を「解決済み」とした立場を日本政府が放棄していないため、これが大きな理由です。

拉致問題未解決の理由は、日朝平壌宣言

政府は2014年のストックホルム合意でも”日朝平壌宣言に則り”という文言を繰り返しています。拉致は解決済みとした日朝平壌宣言をいまだに破棄していません。

2018年9月の民間団体の集会でも、安倍首相(当時)は、「北朝鮮は日朝平壌宣言を破棄するとは言っていないので、これに基づいて交渉していきます」という国民に対する裏切り行為をしています。

この日朝平壌宣言は、「戦後賠償」を含めた、北朝鮮に対する経済的支援のオンパレード。

今後は、国交正常化へ向けて仲良くしていきましょうという両国の和解の文書なのです。

また宣言前に、当時の最高指導者金正日が拉致という事実を認め謝罪しております。

つまり、サティスファクション(精神的満足)という拉致事件に対する解決を日本は受諾しております。その後に和解の文書が両国で締結されているのです。

ここで和解や解決というビッグワードが出てきました。拉致事件はもう両国間で「解決済み」となってしまっているのです。

拉致問題解決とは拉致被害者が日本に帰国することのみ「解決」というわけではありません。

国際法上、原状回復のみが解決というわけではないのです。

国家間で違法行為が行われた場合|国際法はどう解決するのか!?

国家間での違法行為が行われた場合、その後どういう道筋をたどるのか、説明していきたいと思います。

解決方法には大きく3つあり、①原状回復②金銭賠償③サティスファクション(精神的満足)という解決方法です。

③サティスファクションとは、原状回復や金銭賠償が出来ない場合、相手国の政府が自らの責任を認め、公式に謝罪することです。

人間もそうですが、相手が罪を認めたことをもって解決とすることはよくあります。

実際、そのうちの一つ、または複数を組み合わせて国家間で手打ちとするのが通常です。

これは国連総会決議で採択された国家責任条文(2001年採択)でもそうなっております。

拉致問題に関し、北朝鮮はサティスファクションを選びました。その後「今後は仲良くやっていきましょう」と平壌宣言を結んできたのが当時の小泉政権です。ここに、拉致問題は解決しました。

小泉訪朝時、当時の北朝鮮・最高指導者金正日が直接拉致を認め、謝罪することでサティスファクションを行い、日本政府が受け入れた。その後、両国が結んだ国際外交文書が日朝平壌宣言という流れ。

今後は国交正常化に向けて関係を改善しましょうという内容が、日朝平壌宣言です。

ですから、この日朝平壌宣言を破棄しない限りは、日本政府は拉致事件を対外的に「解決」したという立場を維持しています。

国際法上、優先される解決方法はまず原状回復である

当時の「5名生存・8名死亡」というニュースです。日本政府は、北朝鮮側の通告を「事実」と受け止めました。

また、5名は帰国し、8名死亡に関してはサティスファクションをもって解決としたのです。

先ほど国家間の国際違法行為の解決方法として原状回復を挙げましたが、原状回復が出来るのであればまずこれをしなければならないのが国際社会での常識です。

たとえば、国際河川などで上流国が汚染物質を垂れ流し、下流国が被害を受けた場合を想定しましょう。

環境汚染の場合は、その多くが原状回復が出来ませんので、お金で解決します。それさえ出来ないときは、被害国はせめて汚染したという事実さえ認めてくれたら。

せめてその事実だけは認めてほしい。精神的に少しは気持ちが満足するから。これが事実の確認または謝罪というサティスファクション(精神的満足)という解決方法です。

国家間での違法行為の解決はこういう道筋をたどります。

拉致問題の場合は、もし生存している拉致被害者が北朝鮮に存在するのであれば、原状回復ができるわけです。原状回復ができる場合はしなくてはいけません。

拉致問題解決までのロードマップを考える

北朝鮮は国際法の手順に則って、きちんと対応しているわけです。よって、拉致問題は対外的には完璧に解決されました。生存者は帰国させ、死者にはサティスファクションを選んだ。

しかし、北朝鮮が認めていない拉致被害者が他にもいる。死亡とされたものも生存している可能性が出てきました。

北朝鮮は、自国の秘密警察の汚点をこれ以上認めたくない。また、北朝鮮に敵愾心を持つ拉致被害者を帰国させることは、日朝関係を悪化させかねないという懸念もある。

ですが、これらは原状回復出来ない理由とはまったくなりません。

ともかく、日本政府は日朝平壌宣言を明確に破棄することを北朝鮮に告げなくてはいけません。次に、北朝鮮に対し、生存している拉致被害者を無条件に日本に帰国させるという現状回復を要求する。

また、拉致事件被害者に金銭賠償を行うことも求める必要があります。原状回復と金銭賠償、この二つが国際法上の解決方法のスタンダードです。 

ところが、日本政府はいまだに日朝平壌宣言を破棄しません。安倍首相(当時)も「北朝鮮は日朝平壌宣言を破棄するとは言っていないから、これに基づいて交渉を進めていきます」という発言。

北朝鮮にとっては平壌宣言は経済支援のオンパレード。拉致問題も解決済みとしてくれたのだから、自ら破棄することはないでしょう。

日本政府の考えは「どうぞ拉致被害者は煮るなり焼くなり好きにしてください。もうお任せしますので」というあり得ないものなのです。

安倍首相(当時)は日本国民と北朝鮮政府に対してそれぞれ別のことを主張しています。拉致問題を解決すると言って、実際は国民を欺いているのです。

2022年7月に安倍元首相は暗殺されました。深く哀悼の念をささげたいと思います。

が、この安倍元首相の売国行為に対する評価は決してくつがえりません。拉致問題を永遠に解決不可能とした、安倍氏の功罪は暗殺事件とは別に考えるべきでしょう。

拉致被害者を見捨てた日本政府にあきれる諸外国

日朝平壌宣言の破棄を日本政府が行わないからこそ、米国政府からも

一体あなた方日本政府は、どうすれば拉致問題が解決したと認めるのか?

とあきれられてしまうわけです。北朝鮮側からも、

拉致が解決済みでないなら、平壌宣言を破棄したらどうなの?解決済みとしたあの宣言を破棄しないで、拉致事件解決するんだと言われてもね。本気で解決するつもりはないんだろうよ

と鼻であしらわれております。

しかし、なぜ日本政府はここまで拉致被害者に対し、冷淡な態度をとるのでしょうか。

蓮池透氏著『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)にも記載されていますが、

小泉訪朝団帰国後、報告を待つ被害者家族を呼び、当時の福田康夫官房長官がメンドクサそうに、「あんたがたの家族は生きていたんだから。いちいち文句をいいなさんな」

みたいなことを家族の無事を心配する被害者家族に対して発言した。これが日本政府の姿勢です。

朝鮮総連から賄賂を受け取る汚職政治家の撲滅が急務!

拉致問題未解決の理由は、日本政府および外務省の姿勢です。

拉致問題は日朝国交正常化を阻む厄介な”とげ”と評する日本の外交官もおります。これほど拉致被害者にとって冷淡な態度は他に見られません。

外務省にとっては、国交正常化という戦後政治の後始末をしたい。その歴史的偉業を達成したいという欲があります。

また、日本の政治家も北朝鮮と国交正常化する際に支払われるであろう多額の経済支援。

そして、その経済支援金からリベートをもらいたいという欲があります。数億円~数百億円になるでしょうか。

北朝鮮の”在日大使館”であり、日本国内で拉致事件を含む様々な悪行を繰りかえす朝鮮総連。その朝鮮総連から、日本の政治家や官僚は多額の賄賂を受け取っている。

そんなほとんど黒に近い情報も業界内では当たり前のごとくささやかれております。

こういったところに拉致被害者を見捨てた動機が隠されているのではないでしょうか。

汚職政治家を一掃することが拉致問題解決にとっての近道でもあります。

まとめ

北朝鮮拉致事件が解決しない理由は、小泉政権(当時)が日朝平壌宣言を結び「解決済み」としてしまったためです。

その後、小泉路線を継承した安倍政権(当時)も破棄するどころか、遵守すると表明し、拉致問題の再解決に乗り出しませんでした。

当時小泉首相を含む日本の訪朝外交団は、拉致被害者死亡という一方的な北朝鮮側の通告に対し、まともな事実確認もせず、日朝平壌宣言を結び、

「これで解決だ!もう解決だ!やれ解決だ!」と言わんばかりに大手を振って日本に帰国しました。

ところが、現代は戦争さえもリアルタイムでテレビで流れるような情報化時代。すぐに嘘だとばれてしまった。徹底的にばれてしまいました。

半世紀以上も前であれば、これで恐らく両国政府の思惑通りに「解決済み」となったのでしょうが、現代ではそうはいきませんでした。

ちなみに、わたしは先ほどから一貫して「解決済み」と、カギかっこをつけて表現していますが、厳密にはカッコをつけるのは誤りです。

なぜなら、小泉外交団にはそれだけの権限が与えられているからです。当時の小泉外交団が解決済みとしたのは大きな事実です。

が、何の検証もせずに、国交正常化に先走った当時の小泉外交団の大失態は指摘できるでしょう。

大失態としないどころか、その立場を保持し続ける自民党政権の罪もきわめて重い。

拉致問題解決はすべからく国内問題。与野党含め、現在の国会議員の大部分が政界を追放されない限りは永遠に解決できないかもしれません。朝鮮総連から賄賂をもらっているのは、与党議員だけではないでしょう。

このままでは、拉致事件含め、国際社会における日本国民の安全は確保されません(了)。

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