【徹底検証】「地方議会はいらない(税金の無駄遣い)」は正しいか?

地方議員選挙は廃止すべきでは!?政治改革

「地方議員って、何で変なやつ多いんですかね?」

ヤフー知恵袋の質問です。 地方議員って、何で変なやつ多いんですかね? | ヤフー知恵袋

たしかに地方議員の、政務調査費の不正受給問題は絶えません。

カラ出張で、政務調査費をだまし取り、詐欺罪に問われた元兵庫県議もおりました。

地方議員ははたして必要なのでしょうか。地方議員選挙などお金の無駄ではないでしょうか。

地方議員の存在意義とは?地方議員は実際になにができるのでしょう?

地方自治法など法律にもふれながら、基礎から検証していきたいと思います。

 

※こちら政治初心者の方向けの記事です。はたして、地方議会・地方議員は必要なのか。そのような疑問を感じておられる方は、ぜひお読みいただけるとうれしいです。

 

※元兵庫県議・野々村竜太郎氏は、政務調査費をだまし取ったことを「精力的な活動の結果」と述べます。ですが、これは氷山の一角でしょう。

 

有権者の政治意識が育たないことが地方議会を腐敗させた!?

有権者の政治無関心が、一部の有権者のみ投票所に行き、特定の立候補者のみを当選選させる。

これが地方議員の堕落を生み、その堕落がまた有権者の政治無関心を呼び・・・

このような負のスパイラルに陥っている選挙区がほとんどではないでしょうか。

選挙区によっては無投票当選も多いです。

無投票当選とは、定員以下しか候補者がいないため、無投票で当選することです。

2019年は、なんと41都道府県において無投票当選がありました。41道府県議選 無投票当選者が過去最多 | NHK政治マガジン

この負のスパイラルが地方政治腐敗を生んでいる理由の一つだと思います。

地方議員が活躍できる法システムは存在するのか?

地方議員の質の低さはともかく、地方議員が活躍できる法的な制度はあるのでしょうか?

日本国憲法第94条は地方自治体に条例制定権を与えています。

最高裁判例においても、その範囲は当該地方公共団体が処理できる事務に限られていますが、

住民の基本権においても法律の授権・委任を必要とせず、その人権を制約できるとされています。

たとえば、地方自治法第14条3項においては、

条例違反をしたものを2年以下の懲役もしくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留などに処することが可能です。しかし、

憲法第94条には「法律の範囲内」で条例制定ができるとされ、地方自治法第14条1項において「法令に違反しない限りにおいて」とされております。

よって、現行法上、処理できる事務につき、法律や命令の範囲内で条例を制定できるということです。

ようするに、政治家としての仕事。法律を作ること。これが法制度上できないわけではありません。

問題点は、「国の法律の範囲内」がどこからどこまでを指すのか、という点です。

中央政府とのチェック・アンド・バランスとなる地方政府の価値

もし国の決定に従うだけで、地元の問題に主体的に取り組めないのであれば地方議員は不要です。

たとえば、生活保護法第1条は

この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。 生活保護法 | e-Gov法令検索

とありますが、現状、在日外国人にも適用を拡張しています。

本来は日本国民にのみ適用対象ですが、拡大解釈の根拠は行政通達にあります。

具体的には、昭和54.5.8付の各都道府県知事宛厚生省社会局長通知です。

これに対し、地方から是正すべきという声が上がっています。

地方を代表する地方議員はこの問題を是正できるのでしょうか。自治体の力で行政通達を撤回していくみちはあるのでしょうか。

もし撤回する能力/意思がないのであれば、地方議員など不要です。

地方政府は、中央への権限の集中体制を改めさせると同時に、権力分立体制による均衡/監視という機能をもたせることが理念としてあります。

繰り返しますが、地元の問題に対し主体性をもって取り組むことが出来ないのであれば、地方議員は不要です。

「それは国が決めることですから。我々地方議員では何も出来ないんですよ」ということであれば、

国会議員のみ存在すればよいということになります。

1999年地方自治法改正でなにが変わった!?

行政通達が法律かどうかという問題に対し、まず1999年地方自治法の大改正を解説します。

改正前は機関委任事務というのがありました。地方のやっていることは、もともと国の事務であるという建前のもと、

国が施行細目を通達で決め、地方の裁量をほとんど認めない形で運用されていました。

改正により、機関委任事務が廃止。従来の機関委任事務は、自治事務と法定受託事務のいずれかに振り替えられました。

すなわち、国の事務であるが、執行が法律により自治体に委託されるもの(法定受託事務)、

自治体の事務であるが法律の規制を受けるもの(法定自治事務)、

自治体が任意に行いうる事務(随意自治事務)という現在の分類が出来上がりました。

ですが、今でも国は地方に対し発言権があります。

具体的には、地方自治法第245条、

①助言又は勧告②資料提出の要求③是正要求④同意⑤許可、認可又は承認⑥指示⑦代執行⑧協議を挙げ、

これらの関与を行うには法律(または政令)による根拠が必要とされます。

これを関与の法定主義原則(245条の2)といい、かつその関与は「必要最小限度のもの」とし、

自治体の「自主性及び自立性に配慮」することを要求しています(245条の3)。

地方議員が国の法令と戦える4つの方法|地方自治法第250条ほか

では、国の関与に対して地方自治体はどこまで抵抗できるのでしょうか。

1つめの方法として、国の関与に不服がある場合は、国地方係争処理委員会に勧告を出すことができます(地方自治法第250条の13)。

もし国の関与が正当なものと認められた場合、それでも納得がいかない場合には高等裁判所に国の行政庁を被告とし、

違法な国の関与の取り消しを訴えることができます(251条の5)。

たとえば、在日外国人への生活保護を取り上げると、これは機関委任事務時代に出された行政通達に基づいて在日への支給が行われています。

まず、通達の法的位置づけは自治法245条に定められている国の自治体への関与であり、

より細かく言うと245条の⑥指示にあたるのでしょうか。

もしそうであれば、自治体の長その他の執行機関は厚労省を相手方に、国地方係争処理委員会に審査の申し出を行えるという事です。

2つめの方法は、全国的連合組織の届出・意見の申出(263条の3)があります。

これは地方自治体の長、議長同士の連帯組織です。

地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し、内閣又は国会に意見書を提出できる方法。

263条の3第4項に、

内閣は、当該意見が地方公共団体に対し新たに事務又は負担を義務付けると認められる国の施策に関するものであるときは、これに遅滞なく回答する

とあります。国に明確な回答義務を求めています。

3つめの方法は、条例で在日外国人への生活保護支給を不可とする方法です。

法定受託事務(生活保護支給)でも法律の範囲内で条例を制定できます(14条第1項)。

条例は、法律に根拠を必要としない自主的立法で、自治体の事務に関する限り法律と同じ扱いです。

憲法第94条の「法律の範囲内」とは合憲的な法律が存在する限り、条例はそれに反してはならないというだけです。

法律の趣旨が自治体の実情に応じ、別段の規制を行うことを容認するものである場合、

条例は法律に違反しないという見方もあります。

4つめの方法は、地方自治法第15条に定められている「規則」で在日外国人への生活保護支給を禁止することです。

第15条は「地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することが出来る」とあります。

住民の意思VS官僚の意思|地方議員は住民の味方といえるか

1つめと2つめの方法は、かつての機関委任事務時代の行政通達を法令と解釈する見方です。

一方、3つ目と4つ目の方法は法令と解釈しない、あるいはその法令を乗り越えられるという見方です。

かつての行政通達を、現在の自治法で「自治体への関与」と見なすのかという問題もあります。

法規は上下の段階的構造をなしており、上位の法規は下位の法規に優越し、上位の法規に抵触する会の法規は効力をもたない。

これを法の形式的効力の問題と言います。

法律の下に政令、省令があり、これとはまた別個に法律の下に条例が位置づけられています。

政令や省令は法律の細目を定める施行規則です。

地方事務に関する限りでは法律と同じ扱いを受ける条例が、その施行規則より下位にあるのかという問題提起も出来ます。

もしこのような条例が作られたとき、その地方住民の意思たる条例と、一昔前の官僚の意思の発動たる行政通達(省令)のどちらを優越すると考えるのでしょうか。

もし行政通達が優越するのであれば、地方自治などしょせんは建て前であり、

選挙で地元の人たちに選ばれた地方議員の価値など地に落ちると言えるでしょう。

国と「戦う」気概も能力もない地方議員の現状!?

ですが、残念ながらそのような状況(地元民の意思VS官僚の意思)は発生しておりません。

地方議員は国の過ち、法令の誤った適用に対し抗議することもなく、

在日外国人への生活保護支給の禁止さえできておりまえん。

上記の4つの方法のうちどれ一つとして選択しておりません。

国の法律に疑問を感じること、この政令や省令は誤っているのではないか、

それを条例で是正できないかと考えることは世の中にたくさんあるはずです。

あるいは、在日外国人への生活保護支給など単なる一例であって、〇〇業界に××の問題があって、

業界内では自浄作用が働かないので、地方の条例で是正できないかという問題はたくさんあります。

そういう問題を見つけてきて、

「最終的には国と戦います。国の〇〇と言う法律は現場の問題を無視しています。それを条例で以て、あるいは国の関与が不適切なものだと訴えて是正して見せます」と、

これくらい言えないのであれば地方議員など不要です。すなわち、地方議会不要論です。

まとめ

ところが、実際は国会議員と地方議員の関係はずぶずぶであって、

そもそも国も地方も同じ政党から議員が立候補しています。

国会議員も自分の選挙区の地方議員を選挙戦では頼りにしているわけです。

地方議員からスタートして、足場を固めて国政に打って出るというのも一般的です。

もし地方議員の役割を地域の実情に応じた条例作成とし、国の法令の過ちを是正するという理念を地方議会に持たせるのであれば、現状のシステムではおよそ不可能です。

地方議員が主体的に動き、国の法令に対して疑問を提起し、国と戦ってみせるというメカニズムは全く働いていません。

機関委任事務が廃止されても、いまだに在日外国人への生活保護支給という昔の行政通達が生き残っています。

「何もできない地方議員」なのか、「何もする気がない地方議員」なのかはわかりませんが、

地方議会の存在意義を見直す時に来ているといえるでしょう(了)。

 

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