今さら聞けない!議院内閣制と大統領制の違いとは?

政治改革
写真はイメージ ©Marco Oriolesi

日本やイギリスは議院内閣制、アメリカは大統領制。おそらく政治制度が違うのだろうが、詳しく説明できない笑。ちなみにフランスは半大統領制。難しい笑。

大統領制とは、二元代表制とも立法府(議会)の代表と行政府の代表をそれぞれ国民が選びます。一方、議院内閣制は一元代表制とも。国民は立法府の代表しか選べませんよね。一元、二元とは、国民が選べる代表者の数。

それぞれの政治制度のメリット・デメリットをあげながら、どのように政治運営がなされるのか。違いや問題点はどこにあるのか?丁寧に解説していきます。

これだけは押さえておきたい!議院内閣制と大統領制の違い

議院内閣制大統領制の違いは、立法府での法律案に対する決議・表決システム。

立法府において一番重要なのは議事です。どのように法律案を提案、審議し、表決するかという手続きのことです。

議院内閣制では政党投票(party voting)が当たり前。党議拘束とも言われます。

国会法では、名目上、各議員は自分の好きなように賛否を表決で決めていいことになっております。しかし、党議拘束は、政党ごとに賛否をあらかじめ決めておいて、それに所属政党議員は従うというものです。

一方、大統領制の下では党議拘束はありません。議員が自由に賛否を表明します。

党議拘束は、一見すると自由な審議・表決を禁ずるように思えますが、これは”議院内閣制”というシステムからも当然要求されることであります。

政党内閣制が自然発生的に生まれる!(議院内閣制)

議院内閣制の定義を衆院のHPで確認してみます。

内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負うものとされており、衆議院で不信任を議決されたときは、衆議院を解散するか、あるいは総辞職をしなければなりません。このように内閣の組織と存続の基礎を国会に置く制度を議院内閣制といいます。

引用元:衆議院HP”議院内閣制”

わかりやすく説明すると、行政府の代表である総理大臣は、有権者ではなく議会が選びますね。議会の多数派が選んだ人が総理大臣となり、内閣を組織し、行政権を行使します。

また議会には内閣不信任決議権が与えられており、議会が「あの人が総理大臣ではダメ!辞めさせたい!」と判断すれば、それが出来るシステムです。内閣(行政府)の存立は議会(立法府)の信任に依拠します。

一方で、内閣には議会の解散権を与えられており、自らを不信任した議会に対して解散させ、国民に自分たち行政府の方が正しいのだ!と議会に対する反撃方法が用意されております。

責任内閣制とも言われ、「内閣が議会に対して連帯して責任を負う」制度です。

議院内閣制で安定した政治運営を行うには、議会から強固に支持されることが不可欠で、内閣(政府)は議会に自分たちを支えてくれる支持集団をつくろうとするのは自然の流れです。

いわゆる政党の発生。議院内閣制から政党を基礎において政党内閣制が自然発生的に生じます。

ある政党が議会多数派を取り、その党首が内閣総理大臣となるのです。

政党と党議拘束の重要性(議院内閣制)

議院内閣制における政党の存在意義は、政党の主張する政策にあります。国民は、その政策に賛成し、実現することを願い投票します。

日本国憲法では多数決による表決を採用し、政党党首にも各議員と同じく1票が振り当てられております。つまり、党議拘束が必要です。

党議拘束とは、有権者に対する政治的無責任を回避し、政策実現を効率よく達成するシステム。「○○党の議員は必ず○○党の□□政策に賛成すること」を約束したもの。

もし党議拘束をなくしてしまうと、党首の主張も多数の中の一つでしかなく、これでは党首も政党もなくなってしまいます。党首一人が1票を投じても、法案は通りません。

ある政党の政策を支持したから投票したのに、その政策を実現する上での担保が何もないとしたら、有権者の方にとって非常に無責任でしょう。

ですので、党議拘束がなければ、政党と言う存在自体が成り立たなくなり、どのような政策が実現されるかもまったく不透明になってしまうのです。

もし党議拘束がなければ、有権者の政党選択の意味がなくなってしまう。

党議拘束により、政党を成立させ、その政治責任(≒政策)の実行可能性を担保することが、私たち有権者の意見や利益を実現する上でも不可欠です。

党議拘束があるので、議会での議論に意味がなく、居眠り国会議員が出てくる。確かにその通り。自由な審議・表決を妨害する制度に見える党議拘束。ですが、党議拘束がなければ政党が成り立たないという実情もあるのです。

常に党派分裂状態!?(大統領制)

大統領制では、そもそも党議拘束、つまり政党投票 (party voting)が存在しません。政策・法案ごとにそれぞれ賛同者が集まり多数派を形成することになります。

表決方法は交差投票(cross voting)と言われ、一方の政党議員の過半数と、もう一方の政党議員の過半数とが対立している状況です。

アメリカで言うならば、共和党の51%が賛成(49%が反対)し、民主党の49%が反対(51%が賛成)しているような状態です。日本では常に党派分裂を起こしている状況が、”常態”なのです。

では、議院内閣制で説明したように、党議拘束がなければ政策が実現されない。つまり、安定した実効性のある民主政治が成立しないかといえば、そうではありません。

独立した行政権を持つ大統領(大統領制)

議院内閣制では、議会の多数派から内閣が組織されるので、議会と内閣の間に対立関係が存在することがありえません。大統領制の下では議会VS政府(大統領)という構図が常に現れます。

アメリカでは、一般に共和党の大統領の際は、議会の多数派は民主党であることが多いのです。

とはいっても、議院内閣制と違い”大統領の不信任決議”なるものが議会に存在せず、”議会の解散権”も大統領には与えられていません。

両者はそれぞれ独立しており、大統領と議会の権限があらかじめ明確に規定され、その権力分割と抑制均衡が大統領制の基本的特徴となっております。

つまり、大統領は議会の顔色を窺わないで自由に行政権を行使できます。これが強力な行政府の運営を可能とするのです。

日本と違い、両者が手をたずさえて議会運営をおこなうという前提がそもそもありません。

アメリカの大統領には閣法(政府提出法案)が認められておらず、100%議員立法となるのも日本とは異なります。日本では、ほとんどが政府提出法案です。

ですが、これは制度上の建て前です。大統領は自分で法律案を作成し、仲の良い議員にお願いして代理で法案を提出してもらっています。

政党投票がない。つまり、議員が一人ひとりの意思で投票をするというシステム。大統領はいくらでも切り崩し工作を行えます。

仲の良い議員に電話したり、ご飯やゴルフに誘って自分の通したい法律に議会で賛成してくれるようにお願いします。議院内閣制とはまったく違いますね。

まとめ

議院内閣制は、有権者が立法府の代表しか選べない。大統領制は、立法府と行政府の代表を二つとも選べる。前者を一元代表制、後者を二元代表制とも。〇元とは有権者が国の代表を選ぶ数のことです。

議院内閣制は内閣の存立が議会の信任に依拠する。つまり、議会の多数派が内閣を組織するということです。

よって、政党内閣制が必然的に生じ、党議拘束が政党の成立のため、議会運営のために必要となります。

一方、国民に直接選ばれる大統領は、議会に解任されることなく、その地位は一定期間保障され、議会からの信任にはよらないので、独立した強力な行政権を行使できます。

ですが、大統領制は失敗することが多いです。強力な行政権が肥大化し、議会に対する法案の拒否権をもち、いずれは大統領勅令により立法権も手にする場合も。独裁化。

となると、権力均衡が崩れて政局が混乱します。やがてはクーデタや軍事独裁政権が誕生し、民主政治が崩壊することに。ラテンアメリカ諸国ではよく見られました。

一般に、議会制と大統領制のどちらがより良い制度であるのかという質問は、非常に答えにくい質問です。機能していない議院内閣制もあれば、機能している大統領制も当然あります。

両者の違いや問題点を踏まえて、その国柄に合った制度を採用することが重要です(了)。

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