憲法改正すべきか、という議論が選挙戦の争点の一つにあります。
ですが、そもそも日本国憲法は、米占領軍が日本から「軍隊や交戦権をなくし、今後永久に米国に逆らえないようにする」という目的のもとに作られました。
この点は、日本を取り巻く諸外国(中国・ロシアなど)にも大きく「評価」されております。
ところが、この点に関し日本の憲法学者はまったくの沈黙を保っております。よく大学の講義など受講すると、
大日本帝国憲法はほんとうの意味で憲法ではなかった。なので、日本国憲法こそゆいいつの憲法なんです
と、現行憲法を称賛します。大学1年の講義です。
誰も反論などしていないのに、「いきなりなぜこんなことを言い出すのだろう?」と思ったものです。逆に違和感でした。
日本国憲法無効論というものもあります。米占領軍の支配下で行われた、大日本帝国憲法から日本国憲法への改正。その改正方法に大きな不備があり、改正は認められないというもの。
この点に関し、日本国憲法有効論者はほとんど議論自体をしません。「大日本帝国憲法はほんとうの意味の~」という発言はその裏返しです。
実際は、彼ら憲法学者の方が、「日本国憲法はおよそ成り立たないもの」と理解しいてます。
そして、「内容が良ければすべて良し」という議論のすり替えをしてしまうのです。
しかし、日本国憲法前文や9条は、日本国は軍隊の保有や交戦権すら否定し、国防に関して全く無防備な状態を取らせています。そのため、在日米軍の駐留という問題も発生しました。
「横田空域」問題など、日本は自国の首都の上空でさえも、他国に完全に軍事的支配されております。

そのような状況を招いている現行憲法に対し、問題点がないとでもいうのでしょうか。
憲法前文で、日本国は防衛を諸外国の信義に頼るとしております。
ですが、信義に頼れないので、自衛隊や在日米軍を自国に保有・駐留させているわけです。およそ日本国憲法は、現実世界ではなく、米軍が日本を占領しやすい世界を規定しているものなのでしょう。
一方、大日本帝国憲法(明治憲法)には本当に問題点がないのでしょうか!?決してそんなことはないでしょう。
この記事では、憲法改正議論はともかくとして、日本国憲法と大日本帝国憲法それぞれの問題点について解説していきます。
※こちら政治初心者の方、選挙権を得た新成人の方向けの記事です。もちろん両者の憲法をそれぞれ比較・検討し、今後の憲法改正議論の知識を深めたい方にもおすすめです。ぜひお読みいただければさいわいです。
”他国絶対平和主義”という保護国の「憲法」(日本国憲法の問題点)
大学で法律の講義を受講された方はおおぜいおられると思います。
しかし、大学教員による不自然なほどの日本国憲法称賛。一方、大日本帝国憲法を特に説明もせずにこけおろし、ましてや「憲法ですらない」と極論を言います。
ですが、憲法とはもちろんヒトが作ったものです。それぞれ問題点があるはずです。一方的な議論とならないように、日本国憲法と大日本帝国憲法それぞれの問題点を指摘していきます。
憲法前文から見る大問題!?平和に過ごせるのは”○○○”だけ??
まず日本国憲法の問題点です。
憲法前文において、
日本国民は(略)われらとわれらの子孫のために(略)政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、そして平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した
という部分がやはり気になるところ。
この前文を素直に読むと、日本国民と『われら』というのは同一ではありません。
現行憲法案を作成したのはGHQなので、この『われら』は連合国民を指します。ですので、平和憲法と一般に言われておりますが、平和に過ごせるのはあくまでも『われら』だけです。
すなわち、平和憲法ともいわれる日本国憲法。この平和とは連合国民の平和を意味します。正確に言うならば”他国絶対平和主義”というのが的を射ているかもしれません。それを担保すべく、
憲法9条では、軍隊も戦力も保持せず、交戦権さえ否認しております。
交戦権とは、交戦国となる権利のことで、日本はたとえ他国に戦端を開かれても交戦しないということです。やり返すことが出来ず、自国内における内乱・分離独立もやりたい放題となります。
新光倶楽部所属の代議士 藤田栄の指摘(反乱団体の方が支持されてしまう?)
この点に関し、46年当時の議会でも指摘していた議員はおりました。46年7月9日の衆議院憲法改正特別委員会で、新光倶楽部所属の代議士 藤田栄の発言です。
交戦権は放棄すべきではない。交戦権があるからこそ、中立国に対し、日本の敵に対する武器援助や資金援助を止めろと要求できる。交戦権がなければその要求も出来ない。交戦権を放棄すると、内乱・分離独立は、し放題だ。
たとえば、北海道に外国の傀儡政府が樹立され、外国がそれを国家承認すれば、かえって反乱団体のほうが国際法上保護されることになる
藤田発言はまさにその通りですが、当時は占領下でGHQが全て議会での決定権を持っておりました。
当然藤田の正論も受け入れられるはずもありませんでした。
PCのソフトウェアにあたる交戦権がない・・・役に立たない自○隊
交戦権否認とは、いわゆるパソコンのソフトウェアにあたるものです。
自衛隊と名前を変えてパソコン本体の入手には成功したけれど、何のソフトウェアも入っていないので結局は役に立ちません。
災害救助ではなく、国土防衛という本来の任務で、自衛隊があまり積極的な貢献を出来ない理由はここにあります。
交戦権がないので、交戦規定(ROE)もなく、自衛隊は現場の任務に出たはいいのだけれども、その場でどのような行動をしていいのか分からないのです。
対応が常に後手後手に回る原因がここにあります。
最終的には、なんと正当防衛や緊急避難と言う民間人と同種の法的権利で対処することになります。
自衛隊は外見こそしっかりしていますが、法的にはあくまでも警察や民間組織に近いのです。だから役に立ちません。
もちろん他国との戦闘においても、彼らはほとんど役に立ちません。反撃が出来ないので、彼らが盾となってただ一方的に他国軍隊の砲撃を浴びている間に、日本の民間人を安全地帯(?)に避難させる。
その時間稼ぎをする。それでも一応意味はあるのでは!?そんな議論しかできません。
日本国憲法が定める、国防に関する法制度は欠陥であるのはいうまでもありません。
しかしながら、日本国憲法は、日本がアメリカに二度と歯向かわないことを目的に作成された憲法案なので、別に不思議なことではありません。戦う力を徹底的にそいでいるのです。
※交戦規程(ROE)に関してはぜひ次の記事もご参照ください。
まだまだ存在する!日本国憲法の問題点|”なんちゃって”憲法の限界
現行憲法に関しては、他にも第1条と第2条の矛盾があります。
第1条では”天皇は国民の総意に基づく”とあるのに、第2条では”皇位は世襲のもの”とあります。
世襲とは血縁によるものなので、国民の総意に基づくというのは矛盾しております。
また、大災害や戦争時などを想定した、緊急条項がありません。国家の非常時を想定していない憲法諸外国にはありません。コロナで他国では戒厳令が敷かれ、都市封鎖が行われました。
日本ではやらないのではなく、「やれない」のです。そのような権限が政府にはないので・・・
特別裁判所も認められていないので、軍事法廷を開けず、戦争犯罪など国際人道法違反を処罰する機関が国内にありません。
これでは自衛隊が国外に派遣されたとき、彼ら自衛隊員が国際人道法違反(戦争法違反)をした際どのように処罰するのか、諸外国に説明が出来ません。
自衛隊を解散させるのか、日本の管轄権の外に出さないのか、どちらかを決断する必要があります。
このあたりも米占領軍が占領期間中につくった、占領条例という性質を考えればよくわかります。厳密に制度設計などされず、しょせんは「なんちゃって」憲法という感じがします。
君主制の国家に○○制の憲法を移植したことが間違いのもと
元首に関しても、天皇に政治的権威が与えられず、国の元首たるものが存在しない憲法となっております。
日本は君主制の国家なのですが、それに共和制の憲法(アメリカ)を移植しているので、かみ合わないのです。
他にも、衆議院と参議院がともに選挙で選ばれる議院となっており、両者の力が拮抗しているため、政局が混乱しやすいこと(参議院には法律案の議決権も与えられている)。
※参議院の存在による政局の混乱はぜひこちらの記事もいただければうれしいです。

また基本的人権が無制限に与えられていることも問題点の一つです。諸外国では、よく”法律の範囲内で”など法律の留保がついていることが多いです。
もちろん日本国憲法でも同じような条文はあります。たとえば、第12条に”公共の福祉”という言葉です。ですが、これでは弱すぎるのではないでしょうか。
”内閣”も”内閣総理大臣”も存在しない!?(大日本帝国憲法の欠陥)
一方、大日本帝国憲法にも大きな問題点があります。議会の権限が弱すぎたということです。軍部の暴走という言葉が戦後は流行しましたが、
これは当時の国際的潮流もあるので、その時代状況を知らない私たちには、明確な断定はできないかもしれません。たしかに軍部エリートによるテロ事件はありました。それがどこまで政局に影響を与えたのか、
それとも、世界恐慌に対応するべくブロック経済政策をとった欧米列強に端をほっするのか、その点の考察はこの記事では避けたいと思います。では、大日本帝国憲法の問題点とはどこにあるのでしょうか!?
内閣の規定がない!?弱すぎる議会の権限
大日本帝国憲法の問題点に関し、まず内閣に関する規定がないことが挙げられます。
議会政治が発達してくれば政党政治となり、政党の第1党が内閣を組織し、行政権行使に当たり議会と連帯して責任を負う。その議院内閣制が明文化されていないことです。
内閣総理大臣も憲法に記載がなく、内閣という言葉ももちろん憲法の明文上にありません。議会が行政府/内閣に対して弱すぎるんです。
第71条に議会で予算が成立しなかった場合は、政府は前年の予算を施行してもよいという条文さえあります。
すなわち、議会による予算の統制も不充分でした。当然、内閣不信任決議もありません。
制度設計が甘い○○制は大日本帝国憲法時代から続く!?
日本国憲法と同様に、両議院共に法律案の議決権を与えられているということも問題でしょう。
力関係が拮抗する両議院が存在すると、政局が不安定になるからです。
両議院においてその役割を全く同じものにするのはナンセンスであり、権能に違いを持たせなくてはいけません。
たとえば、アメリカ合衆国憲法では、第1条第7節にて「上院はこれ(法律案)に対し修正案を発議し、もしくは修正を付して同意することができる」としております。
このように両院で力関係に違いを持たせなければ、政局は混乱するでしょう。
日本国憲法・大日本帝国憲法ともに、これら憲法条文では第二院(参議院/貴族院)の権限が強すぎるのではないかと思います。
また、大日本帝国憲法は、議会に憲法改正の発議権(発案権)がありません。発議権がなければ、当然、修正する権利もないということです。
現状もそうですが、憲法改正手続きをしっかり用意しておかなければ、必要な時の改正、すなわちアップデートがスムーズに行えません。これは両憲法ともに大きな問題点といえます。
※大日本帝国憲法から日本国憲法への憲法改正では、GHQの指示により帝国議会が憲法案を修正させております。もちろん憲法違反です。本来であれば、修正する権利さえないのですから。
まとめ:日本国憲法も大日本帝国憲法も中身に○○あり
日本国憲法、大日本帝国憲法ともに大きな問題点をいくつも抱えております。
日本国憲法の場合、日本の憲法学者の言葉を裏返しにすれば、「これは米占領軍が占領目的に作ったものであり、ほんとうの意味の憲法ではない」とさえ主張できるかもしれません。
もちろん、この世に完璧な憲法などありません。アメリカ合衆国憲法なども、第1条~第7条までしかありません。
その修正条項として、修正第1条~第26条まで設けております。つまり、修正条項の方が数が多いのです。
日本国憲法、大日本帝国憲法とも時代に合わせて条文を増やしたり、改正したりすることが必要ではないでしょうか。
その点を考えると、両憲法共にあまりに改正しにくい憲法。その点も両者ともに問題点と言えるでしょう。
法とは、社会状況により変化・修正、すなわちアップデートされていくべきものです。
最後に、日本国憲法の前文の不自然さをあげます。
たとえば、アメリカ合衆国憲法の前文はどうなっているのでしょうか。
〔前文〕われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の静穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫の上に自由の祝福のつづくことを確保する目的をもって、アメリカ合衆国のために、この憲法を制定する。
このアメリカ合衆国憲法の前文と日本国憲法の前文を比較すれば、さすが米占領軍である米国人がたった1週間で作ったものなので、よく似ているなと思います。
ただし、日本国憲法の場合は、われらとは米国人であり、日本国民は米国人のために武器を捨てなければならないという点は大いに違っております(了)。
60秒で読める!この記事の要約!(お忙しい方はここだけ)
- 大日本帝国憲法(明治憲法)は「ほんとうの意味での憲法ではない」と憲法学者は感情的に主張することが多い。しかし、なぜそう言えるのだろうか
- 日本国憲法、大日本帝国憲法ともにそれぞれ問題点はある。日本国憲法は、他国絶対平和主義という保護国の「憲法」であり、自国の国防を無防備にするという大きな欠陥を抱えている。他にも緊急事態条項もなく、元首の存在もあいまいで、そもそも君主国である日本に共和制的な憲法は性格が合わない。これは米占領軍が起草したからというのが主たる理由である
- 大日本帝国憲法は内閣も内閣総理大臣の規定もなく、議会の権限が弱すぎた。議院内閣制の定めもなく、政府は議会に対して責任を負わない。憲法の発議権も修正権も議会には与えられていない。政党内閣が自然発生的に生じたこともあるが、国際社会の潮流とともに消えてしまった
- 日本国憲法有効論者の印象的な大日本帝国憲法批判は的外れ。両憲法ともに欠陥はあり、その欠陥を適宜社会状況に合わせて改正していく必要があるだろう
※日本国憲法、大日本帝国憲法。それぞれの違い、問題点など、さらに詳しく知りたい方向けのおすすめ書籍はこちら!よろしければ、ぜひご参照くださいませ。
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