沖縄の騒音問題の実態とは 米軍機の騒音に悩まされる沖縄県民(-“-)

政策争点
写真はイメージ ©TVBEATS

「なぜ在日米軍は日本でやりたい放題ができるのか?」

日米地位協定や日米合同委員会(地位協定で設けられた協議機関)の合意や議事録が、米軍に治外法権的な特権を与えているからです。

特に在日米軍機の騒音被害。沖縄県民をはじめ、基地周辺の住民の方々がいま現在も苦しみ続けている問題です。

沖縄の普天間飛行場(米海兵隊運用)、嘉手納飛行場(米空軍運用)は基地周辺に住宅地や学校・病院など公共施設が密集しており、

深夜でも、住宅地上空を飛ぶ米軍機が、まさに高架線ガード下ほどの騒音をもたらし続けています。

もちろん日本政府も沖縄の騒音問題防止に関しては理解していおり、 96年、日本政府は米国と『騒音防止協定』を結びました。

しかし、現在も米軍機による騒音問題は解決されておりません。

この記事では、米軍機による騒音・轟音被害の実態と日本政府の対応に関し、その実態を高校生の方でもわかりやすく解説していきます。

沖縄では常に普天間基地設問題が争点になっております。その背景の騒音問題について詳しく知りたい方に、ぜひお読みいただけるとうれしいです。

住民の健康よりも、米軍の任務が最優先!

米軍機による沖縄の騒音問題は歴史的な問題です。戦後一貫して、存在し続けています。

たとえば、この問題に関し、政府が96年に米軍と結んだ『騒音防止協定』があります。

96年3月28日、日米合同委員会(地位協定の協議機関)。普天間・嘉手納飛行場それぞれにつき航空機騒音規制措置(以下、『騒音防止協定』)が承認されました。

もちろん沖縄の騒音問題深刻化をうけたうえでの、政府側の対応でした。 ですが、まったく米軍機の騒音を防止するうえでの実効性がありませんでした。

『騒音防止協定』はそれぞれ全5項目の日米での了承事項が示されているのですが、

第2項に”在日米軍の任務に支障をきたすことなく航空機騒音による望ましくない影響を最小限にすべく設定された”とあります。

設定上の方針から、もうすでに日本政府の及び腰な姿勢がはっきりとわかります。

また、第3項aでは”できる限り、、、、、学校、病院を含む人口稠密ちょうみつ地域上空を避ける”という表現。

第3項cでは”任務により必要とされる場合を除き”などという表現が多用され、全体的に禁止するという方向性ではまったくないのです。

とりわけ、住民から特に要請があった「夜間飛行訓練の禁止」については、第3項iで”2200~0600(深夜22時~朝6時)の間の飛行及び地上での活動は、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される”とあります。

要するに、米軍側に”部隊の機能維持のために必要だ”と言われれば夜間飛行でもなんでも認められるのです。

もちろん、この点に関し、第193回衆院の質問主意書(平成29年3月17日/糸数慶子提出)で、 運用上のために必要とは、「部隊司令官に完全にゆだねられているのか?日本政府は関与できるのか?」という質問が提出されています。

それに対し、政府の回答は”米軍において判断されるもの”であり日本側は関与できないと述べております。

結局、すべて米側の裁量にゆだねられているのです。もはや抜け穴だらけの合意といえるでしょう。

騒音防止協定の締結後、なぜか騒音問題が増してしまった!?

実際、事態はまったく改善されておりません。

協定当初の、ある米軍基地における一日の飛行回数は多い日で200回。協定後はなんと逆に増加してしまいました。02年には多い日でなんと300回となり騒音被害が悪化。

これは当時アフガン・イラク戦争により訓練が強化されたためでしょう。もうこの時点で破綻しているんです。

普天間飛行場のある宜野湾市の報告では、05年6月には深夜から早朝にかけての騒音回数が253回でした。(松井一彦「米軍普天間飛行場の現状と今後」”立法と調査” 2006.10 No.260)

沖縄県嘉手納町議会の報告では、平成27年度に一番騒音の激しい屋良やら地区で、70dBデシベルを上回る騒音が年間23996回発生。

年間最高値では106.3dBデシベルを計測。70dBは騒々しい街頭やセミの声、100dBは電車のガード下並みの騒音となります。

騒音防止協定自体がそもそも”防止”を目的にしていない!?

深夜早朝騒音でも屋良地区の平成27年度の報告は70dB以上の騒音が1620回発生しており、まった『騒音防止協定』が守られていません。

合意がまったく遵守されていないことに対し、政府の説明は以下の通りです。

周辺住民に与える影響を最小限にとどめるよう米軍に申し入れを行ってきている。米軍はできるだけ軽減するよう最大限努力しているものと承知しており、航空機の運用については合意に従って行われていると認識している

引用元:内閣参質193第54号平成29年3月28日

日本側は”申し入れ”を行い、米軍側は”最大限努力”しているのだ、と主張します。こういう『逃げの答弁』は一貫して変わらない戦後日本政府の姿勢。

米軍側が”必要な訓練だから認めよ”といえば、それがそのまま通る協定です。

話が違う!?沖縄県外訓練移転の悲しい実態(-“-)

このような事態を受け、沖縄に発着する米軍機の数そのものを減らそうという動きが出てきました。

これは当初、在日米軍機による沖縄の騒音問題に対し、非常に画期的な解決方法になると注目されておりました。

結果、16年9月から10月までグアムへの訓練移転、17年3月、8月、12月、18年2月から3月の国内の計5回の訓練移転(沖縄県外訓練移転)を実施することになりました。

移転経費は日本側負担で、16年は確定額で3億6800万、17年度は18億7800万、18年度は23億1700万の予算が計上。すべて日本側負担というのが悔しいところです。

日本政府は、これだけのお金を年度当初に米軍に支払っております。

しかし、大きな抜け穴がありました。

この訓練移転は普天間飛行場で運用されているオスプレイに関しての訓練移転であり、外来機は対象外でした。

外来機とは、普天間飛行場で運用されている飛行機ではありません。

米国本土や米空母から普天間に飛んでくる戦闘機を指し、その外来機がタッチ・アンド・ゴー訓練を普天間で行うんですね。

つまり、米軍はオスプレイが訓練移転により普天間飛行場が空きとなった分、訓練を減少させるのではなく外来機を呼んで普天間で訓練させていたんです。

米軍に完全に”おちょくられる”日本政府・・・

実際、沖縄県が調査したところ、17年3月6日~17日の間、米軍再編に係る運用機の県外移転訓練が行われましたが、

期間内においてオスプレイに関しては回数減がみられるものの、外来機の急増により全航空機の離着陸回数については全体平均値より高くなってた。必ずしも訓練移転が離着陸回数減につながっていない。

という見解を示しております。

日本が何十億ものお金を出して普天間飛行場のオスプレイの訓練を県外に移転させたが、

米軍は「外来機は関係ないよ」とばかりにその空いた分を外来機を呼びよせて訓練させていたのです。結果的に、離着陸回数は返って増えてしまいました。また、時差の関係で外来機は夜間に飛んでくることも多い。

よって、夜間飛行訓練の回数も増え、沖縄県民の負担がかえって増加してしまいました(第197回参院外交委員会会議録第4号平成30年11月27日)。

もう完全に日本政府は米軍に”おちょくられて”います。これでは何のために日本は何十億ものお金を拠出したのでしょうか!?まったくの税金の無駄遣いとなりました。

まとめ

沖縄の騒音問題を解決するための『騒音防止協定』は完全に抜け穴だらけ。米軍の意向がすべてにおいて優先される「米軍のための協定」。

沖縄では、県外訓練移転という新しい解決法が示されたものの、外来機が代わりにやってくるようになり、逆にそのタッチ・アンド・ゴー訓練(離着陸訓練)でますます騒音問題が深刻化するという事態に。

まったく沖縄の騒音問題の解決策とはならず、もはや完全に米軍におちょくられる結果となりました。

しかしそれでも、日本政府は、

普天間飛行場に所在するオスプレイが長期間沖縄を離れることになって、沖縄の負担軽減に寄与するというふうに考えておりまして

引用元:当時・岩屋毅防衛相の発言

との発言。いまだに米軍をかばうしまつです。

沖縄の騒音問題の解決策であった県外訓練移転では、基地内の米軍機の訓練を移転させても、”外来機の訓練は対象外”と言われ、逆に訓練回数が増すという屈辱的な結果に。

現状、米軍機による住宅地上空での騒音・轟音被害を抑制させる実効的な仕組みは現在の日本には存在しません。

もはや破綻している騒音防止協定を守るよう”申し入れ”を行う以外、日本政府は何もする気がないというのが現状です(了)。

※普天間基地問題に関しては、こちらの記事もぜひお読みいただけるとうれしいです。

60秒で読める!この記事の要約!(お忙しい方はここだけ)

基地周りの住民は深夜問わず一日中、在日米軍機のもたらす騒音問題に苦しんでいる。特に沖縄の騒音問題は異常である。

政府が96年3月に締結した『騒音防止協定』は完全に抜け穴だらけの”ざる協定”。住宅地上空の訓練も含めて全て米軍側の裁量に委ねられている。米軍が”任務のために必要”と言えば、どのような訓練でも深夜早朝問わず認められる。

16年9月には普天間基地のオスプレイ訓練を県外移転することで、沖縄県民の負担を減らそうとしたが、米軍はその空いた時間に外来機を呼びよせて訓練させてしまう。

かえって離着陸回数などが増し、夜間飛行訓練も増え、沖縄県民の負担が増すという結果に。訓練移転費用はすべて日本側負担。おまけに「外来機を訓練させないとは言ってないよ」という米軍側のへりくつに対し言い返すこともできない日本政府。

米軍に完全に”おちょくられて”しまう。今も米軍の騒音被害を減少させる実効的な仕組みは存在しない。解決しようという意思も日本政府にはない。

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