今さら聞けない!普天間基地問題ってなに?丁寧に解説! | 日米地位協定の問題点

政策争点
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「基地の中に沖縄がある」

2003年11月ラムズフェルド米国防長官(当時)は「普天間基地は世界一危険な基地」といいます。

沖縄の普天間基地(飛行場)の周辺には学校や病院を含む公共施設、住宅地が密集しており、

基地のフェンスのすぐ向こうはもう住宅街です。

もちろん米国本国ではこのような基地の建設は認められません。

なぜなら、米国の連邦航空法では、民間・軍事にかかわらず飛行場にはクリアゾーン(利用禁止区域)が設定され、

滑走路の両端900メートルには住宅地を含む建物の建造などしてはいけないことになっているからです。

ようするに、安全基準のうえで、米国本国ですら認められないような基地が普天間基地なのです。だからこそ、ラムズフェルド米国防長官(当時)はそのような感想をいだいたのです。

現状、普天間のクリアゾーン(利用禁止区域)には公共施設・保育所・病院が18か所、住宅約800戸、約3600人の住民が居住しています。

普天間基地は米海兵隊専用飛行場。

ヘリ部隊を中心に、多数の回転・固定翼機が配備され、騒音被害・墜落事故など問題だらけの運用がいまもなされております。

※この記事では、政治初心者の方、選挙権を得る新成人の方向けに普天間基地問題”をかみくだいて丁寧に解説しております。普天間基地の場所、発生している具体的な問題、それに対する日米両政府の対応など。ぜひご関心をお持ちの方は、お読みいただけるとうれしいです。

普天間基地はどこにある??問題点の総整理

まず、基地の場所が沖縄の「どこ?」にあるのか、皆さんご存じでしょうか?

普天間基地は宜野湾市(人口約9.4万人)のなんと中心部に位置し、市の面積の約25%をも占めているのです。

よって、米軍機による騒音被害以外にも、いろいろな問題が発生しております。

たとえば、計画的な都市開発、交通整備などにも基地の存在はネックとなっており、下水道や雨水排水などにも大きな障害となっています。

住民は騒音被害で睡眠障害に・・・無視される”騒音防止協定”

まず、大きな問題として米軍機による騒音問題。

これに関して、日米両政府は96年に『騒音防止協定』を結びましたが、

ですが、米軍が”できる限り”とか”実行可能な限り”などの条件がついているので、まったく実効性のないものとなりました。

実際、翌年の97年には一日で飛行回数の多いときは200回。2002年にはアフガン・イラク戦争の影響もあり、なんと300回に増えました。

驚くべきことに、かえって以前よりも飛行回数が増え、騒音問題が深刻化したのです。

日常、ふだんから普天間の周辺の住宅地には高架線ガード下並みの80~100デシベルの騒音が発生しており、05年6月には深夜から早朝にかけての夜間飛行訓練がひと月で253回。

沖縄市民には睡眠障害などの健康被害も生じております。この状態は現在もまったく変わっておりません。

※騒音防止協定に関しては、ぜひこちらもお読みいただけるとうれしいです。

沖縄の騒音被害の実態とは!? | 日米地位協定の問題点(騒音被害)
【政治初心者向け】沖縄の普天間基地や嘉手納基地周辺では、米軍機の騒音被害に沖縄の住民がいま現在も苦しみ続けております。なぜ日本政府は対応しないのでしょうか。96年、日米で騒音防止協定が結ばれたものの、逆に騒音被害が増えているのです。その実態を丁寧に解説します!

米軍が○○○市すべてを支配する-常識が通用しない!普天間基地の実態

二つ目の問題としては、墜落事故が多発していることです。

墜落事故も基地周辺に住宅地が密集しているため、起こるべくして起こっているとも言えます。

クリアゾーン(土地利用禁止区域)もそうですが、米国本国の基準では、

滑走路両端900メートルのクリアゾーンから、さらに1500メートル、そのさらに2100メートルがそれぞれAPZ1、APZ2(APZ:事故危険区域)に指定され、

滑走路両端4500メートルにおいて住宅や学校・病院などがあってはならない

と定められております。もちろん米軍は、米国本国ではしっかり守っております。しかし、日本では特権を与えられているので、好きなようにできるのです。

とはいっても騒音被害、墜落事故、裁かれない米兵犯罪など、

これらは他の在日米軍基地でも一般的にみられる問題ではあります。

しかしながら、特に普天間基地問題と言えば、

なんと市の中心部に米軍の飛行場が大きな面積(市の約25%)を占めており、

普天間基地が置かれている宜野湾市すべてがヘリ部隊を中心とした米軍機の支配下にあることが特色です。

基地と住宅地との距離が非常に近く、夜間飛行訓練も日常的であり、

基地の騒音被害・墜落事故の危険性に対し、沖縄市民は日中夜にっちゅうや(深夜)問わずして苦しまねばならないというのは、やはり異常な事態ではないでしょうか。

最後に、雨水排水問題とはなにか?

普天間基地は市の中心部の少し高台に位置するので、雨水などが周辺の住宅街に流れてくるんですね。

さらに普天間基地では排水設備が劣化しており、大雨が降ると周辺の住宅地が床上浸水被害にあっております。

したがって、米軍基地周辺の沖縄市民の方は何重もの生活苦に苦しめられているのです。

普天間基地を閉鎖することは出来ないのか??

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「なぜこの危険きわまりない普天間基地を閉鎖できないのか?」

上記の普天間基地を取り囲む住宅街をご覧ください。そのような疑問を持たれる方は多いでしょう。

この点に関し、日本政府は国会答弁にて

沖縄の地理的優位性により、米海兵隊を沖縄に配備するのは必要不可欠である

といいます。

沖縄は。われわれ米軍が第二次大戦で手に入れた領土なのだ!

そもそも在日米軍基地は日本国の防衛に資するためにその存在を許されており、

そのために日本側は巨額のHost Nation Supportホスト国支援(HNS)をしているわけです。

ですが、たとえば沖縄に駐留する海兵隊は強襲揚陸部隊です。日米戦争時に発足し、その太平洋の小島を争奪するにあたって活躍した部隊。

もし仮に朝鮮有事の際には、通常戦でSouth Korea(南朝鮮)がNorth Korea(北朝鮮)の戦力を圧倒していますし、China(中国)との戦争ではそもそも取り合うような島々もほとんどない。

尖閣諸島に関していえば、「それは日本の問題だ」といわれ、つっぱねられるのが関の山です。

事実、1970年1月にAlexis Johnsonアレクシス・ジョンソン国務次官は

日本の防衛は自衛隊に主な責任があり、通常戦で米側は日本防衛のために出動しない

と発言しております。これは、今げんざいにおいても米軍の本音でしょう。

米国は自らの世界戦略のために、海兵隊というパワープロジェクション(≒戦力投入能力)に優れた部隊を、沖縄という地政学上優れた地域に配備しておきたいだけというのが実情でしょう。

完全に、米国政府・米軍の都合により沖縄に基地がおかれているのです。

なにより、米軍には「沖縄は自分たちが戦って得た領土である。なぜ放棄しなくてはいけないのか」「ここはいつまでも自分たちが自由に使える場所だ」という認識が根底にあります。

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米国本土で運用するよりも安上がりだという理由も・・・

また、日本はHNS(ホスト国支援)が巨額であり、米国本土で米軍基地を運用するよりもはるかに安上がりだから置いておきたいという理由もあります。

ですから、海兵隊の普天間基地に代わる移設問題などもとから考えるまでもなく、

日本側からすれば、沖縄の海兵隊基地は不要なのです。

しかし、現在の日米地位協定では「米国が配備したいと言えば、日本側はその基地をどこでも提供する」という『全土基地方式』となっております。

軍事的な理由ではなく、日本で運用するほうが安上がりだし、経済的だという米国の意向(政治的な理由)が強ければ、それがそのまま通るのです。

もちろん、こんな理由で沖縄県民、いや日本国民を納得させるのは不可能でしょう。

普天間基地問題の今後のゆくえはどうなる!?解決方法をさぐる!

「普天間基地問題はどうすれば解決できるのか?」

まず、そもそも論を言えば、『普天間基地問題』は米国本土ではまず起こりえません。

米国では、米軍は米国内の法令を遵守し、周辺に住宅地が多数密集する普天間のようなところに基地建設などまず認められないからです。

もちろん米軍は米国の航空法を守り、住宅地の上空では訓練等行わず、低空飛行訓練なども行いようがありません。

しかし、日本では米軍の意向がすべて通ってしまうという日米の力関係があり、

米軍がやりたくて仕方がない、実戦を想定した住宅地上空での飛行訓練、低空飛行訓練が行えてしまうのです。

米軍にとって、普天間基地もそうですが、在日米軍基地は訓練の場としても最適なのです。

このような現状を踏まえたうえで、どのような解決方法があるのでしょうか。

それは、ひとつひとつ米軍が日本で基地を運用するメリットをつぶしていくしかないと思います。

憲法9条問題と普天間基地問題との密接な関連性

まず、日本がいわゆる”思いやり予算”を含む巨額のHNS(ホスト国支援)を止めること。もちろん米国政府は強硬に反対するでしょう。

米国側は”建前たてまえ”としては存在する日本防衛義務を課されており、日本側には米国防衛義務がない。

その片務性の代わりに日本側は基地提供義務があるのであり、

HNS(ホスト国支援)もこれまで以上に負担すべきだと強く訴えてくると思います。また、

日本には憲法9条があり軍隊を放棄し、交戦権(交戦国となる権利)も否認している。他国に先端を開かれても反撃できないような状態だ。だから米国の戦力が必要なはずだ

と主張してくるかもしれません。もちろん、日本政府自らがこの点を米国よりも理解しております。

もちろん、日本政府も有事となれば、そのような「憲法上の制約」を無視して行動するでしょう。たとえ国内法違反とはなっても、国際法違反ではないのですから。

つまり、ここで憲法9条問題がどうしても在日米軍基地問題とからんでくるのです。

改憲派も護憲派問わず、良識ある日本国民は、

憲法9条が安全保障問題を含むすべての外交問題において日本の交渉力を徹底的にいでいる

という現状は認めねばなりません。それが、戦後日本を米国のclient state従属国にしているわけですから。これは、日本国民のみなさんが常日頃から感じている、

日本政府はなぜ常に弱腰で毅然と外国にはものを言えないのか

という疑問の本質にある問題提起です。

「米軍基地反対!」とだけ主張していても問題は解決しません。それは戦後一貫して続けてきて、これまで失敗し続けてきた戦略なのですから。

ともかく言えることは、普天間基地問題を解決するには沖縄県外に移設先を見つけるとか、沖縄県民の方に県内移設を承諾してもらうことは解決方法ではまったくありません(了)。

60秒で読める!この記事の要約!(お忙しい方はここだけ)

要約
  • 普天間基地問題とは、宜野湾市の中心部の広大な面積(市の約25%)を基地が占め、また基地周りには住宅地や学校・病院などが密集していること。そんなありえないところに軍隊の飛行場が存在する。米軍のトップですら認める、世界一危険な基地のこと
  • 市の計画的な都市開発や交通整備の妨げともなり、その排水設備の劣悪さで周囲の住宅地に床上浸水問題さえ引き起こす。もちろん夜間飛行訓練は常態化し、騒音被害、墜落事故など危険性に付近の住民は休日・深夜問わず苦しめられている
  • そもそも普天間を専用飛行場とする米海兵隊は日本防衛のためではなく、米国の世界戦略のため、安上がりの運営費のため普天間に置かれている。米海兵隊不要論もあるにもかかわらず、日本側はまったく毅然きぜんと交渉できないし、する気もない
  • 事実、米国本土では、住宅街のど真ん中に軍隊の基地を作ることは米国内法で許されていない。このような基地が存在すること自体ありえないことである。解決方法は、国土の狭い沖縄県内で移設先を探すということではないのは確かである

 

※在日米軍と沖縄問題に関しては、次の書籍もおすすめです。

   

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