超危険な在日米軍の低空飛行訓練。在日米軍基地が存在する地方自治体では、低空飛行訓練を中止するように、改善要求の意見を政府に毎年訴えております。
特に、米軍は演習地(訓練空域)以外でも低空飛行訓練を行い、地域の住民に爆音・轟音被害、墜落の恐怖など、日常生活に対する深刻な脅威を与えている。
その中でも、民家上空での低空飛行訓練などは一刻もはやく中止されるべきでしょう。
米国本国では民家の上空での低空飛行訓練は米国内法で禁止されています。もちろん自衛隊もそのような危険な訓練は禁止です。
ところが、日本国内法の規制が米軍には及ばないことをよいことに、米軍は「非常に密度の濃い訓練ができる!」と日本で嬉々として低空飛行訓練を行っています。
腹立たしいことですが、”より実戦に近い訓練ができる”ため、日本での訓練をとても重宝しているのです。
超危険な低空飛行訓練に対し、日本政府は規制できないのでしょうか。これまでの経緯から現状に至るまで、ひとつずつ丁寧に解説します。
米軍のニーズに合わせて日米地位協定のルールを変えてしまう!?
低空飛行訓練の最大の問題は、人口密集地域や学校・病院の上空などで行われていることです。こんな危険な低空飛行訓練を、米軍はいつからやるようになったのでしょうか。
80年代から民家の上での低空飛行訓練を認められてきた
低空飛行訓練に対する日本政府の見解の変遷を見てみましょう。
73年外務省作成の国会答弁の裏マニュアル『地位協定の考え方』では、「通常の軍隊としての活動(演習など)を施設・区域外で行うことは協定の予想しえないところ」とあります。
以前は訓練空域以外では演習は行えませんでした。日本政府は認めていなかったのです。
ところが、83年の『地位協定の考え方』(増補版)では、「空対地射爆撃等を伴わない単なる飛行訓練は、施設・区域内に限定し行うことが予想される活動ではない」と解釈を変更しています。
米軍の実態にあわせてルール変更する日本政府
日米地位協定の解釈変更は、地位協定の協議間である日米合同委員会でされます。日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人らで組織されております。
日米合同委員会は、基本的に米軍の要求をそのまま受け入れます。米軍が協定違反など現状のルールを破ると、それを追求するのではなく、米軍の実情に合わせてルールを変更してしまう。
地位協定の解釈を米軍の実際の活動やニーズに合わせて変更していたのだと述べる識者の声もあります(参照元:伊勢崎賢治、布施祐仁氏著『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』)。
実際、80年代以降、米軍機の低空飛行訓練に対し地元住民による目撃情報が相次いで寄せられていきます。
在日米軍の低空飛行訓練による度重なる墜落事故や爆音・轟音被害に耐えかねた地方自治体住民からの改善要請の声が高まり、
外務省は平成11年1月14日「在日米軍による低空飛行訓練について」と題する文書を公開し、その要求に対しての回答を発表しました。
米軍の味方をする外務省
外務省の平成11年の回答では、安保条約目的達成のためには、米軍が戦闘即応態勢という軍隊の機能を維持するため低空飛行訓練は不可欠であると主張します。
なるべく日本の地元住民に与える影響を最小限にするから。どうか今後も続けさせてほしいと米軍の立場を外務省が代弁するのです。
米軍は人口密集地域に妥当な考慮を払う??
具体策としては、「人口密集地域や公共の安全に係る他の建造物(学校・病院等)に妥当な考慮を払う。在日米軍は日本の航空法により規定される最低高度基準を現在用いている」とのこと。
しかし、もし最低高度基準を用いているなら、地元住民から改善要請の声など出ません。
”妥当な考慮”ではなくて米国内法規定にあるように、民家等が並ぶ人口密集地域では低空飛行訓練を止めてもらえばいいだけ。
米国内ですら危険な訓練であると米国内法で行えないのです。なぜ日本では認めるのでしょうか。
とうぜん国会議員から疑問の声が上がり、「在日米軍による低空飛行訓練に関する質問主意書」(平成11年7月15日/第145回衆院/濱田健一提出)が出されました。
在日米軍による低空飛行訓練に関する質問主意書(国会議員VS外務省)
濱田議員の在日米軍の低空飛行訓練に対する国会質問を紹介します。
谷間を飛んだり、峠を越える時などはほとんど陸地すれすれに飛ぶ米軍機が目撃されている。これは航空特例法で最低安全高度(81条)や粗暴な操縦禁止(85条)などの義務が米軍には免除されているからだ。そのために米軍の低高度飛行などが行われていると認識していたが、日本の最低高度基準を守っているとはどういうことか?地位協定が変更でもしたのか?
濱田健一議員の追及は鋭いものばかりです。他にも、
(妥当な考慮に関し)これまでは考慮していなかったが、今後は考慮するということか。例えば、これまで島根県石見空港の上空を岩国所属機が何回も旋回したりすることが目撃されている。町の上空を通過する際は、役場、学校、保育所の上空を飛んだり、そこで急に旋回し、逆に向いて飛んだなどの話がたくさんある。これらは、過去のことで、今後は、同様のことは行われないということなのか、それとも、過去においても注意していたが、実際には、約束は無視されていたのか?
低空飛行訓練ルートに関しても政府に質しています。
低空飛行訓練ルートは、日米地位協定に基づいて設置されたものでなく、米軍が自らの意志で地図上に線を引いたものと認識しているが、もし確認しているのであれば、地位協定に明確に位置づけたということか。いずれにしろルート図や訓練所要を公表すべきではないのか?
米軍の”自発性”に解決を求めた日本政府の無責任さ
政府の答弁は、改めて駐留軍の低空飛行訓練の不可欠性を大前提とし、必要性を訴えます。
米軍は全く自由に飛行訓練等を行ってよいのではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきであり、米側に対して安全確保の申し入れを行ってきている。
また航空特例法に関する質問に対しては、
航空特例法による米軍の航空法の一部免除は変わらずそのままである。しかし、昨年四月に米軍が公表した低空飛行訓練に関する記者発表文においても、「在日米軍は、最低飛行高度に関する規則(人口密集地三百メートル、その他の地域百五十メートル)等、日本の航空法令に自発的に従っている」と述べている。その米側の基本的考え方を日米双方で文書をもって合意した(99年合意)。
つまり、米側は”自発的に”従っているだけ。航空特例法や地位協定などは以前と変わらず、米側に最低安全高度等の規定を免除しているとうことです。
もちろん、米軍がこれまで自発的に従ったことはありません。人口密集地域や学校等の公共施設の上でもお構いなしに、危険な低空飛行訓練を続けています。妥当な考慮は一向に見られません。
米軍が日本で低空飛行訓練をやりたがる理由とは?
低空飛行訓練ルートの具体的な開示を求めた質問に対しては、
具体的ルートの詳細等は合同委員会の場でも未確認で承知していない。またこれは米軍の運用にかかわる問題であり、これらを明らかにするよう米側に求める考えはない。
答弁書の中には、飛行訓練の定義に関し、米側の説明から引用し”敵による探知及び攻撃を避けるため、低高度で飛行する訓練”だと回答しております。
ですが、誰も低空飛行訓練を行うな!とは言ってはおりません。日本の国内法に従い、人口密集地域や学校など公共施設の上空では行わず、海上でやればいいだけです。
しかし、素人考えですが、人口密集地域などで行ったほうが海上と比べて障害物も多く、より実戦に近い訓練が行えるのだろうなとは思います。
とうぜん米国内ではこのような訓練は米国市民からの猛抗議により国内法で認められていません。
だからこそ、米軍は日本に来て低空飛行訓練をやりたがるのです。
米軍自らが暴露!地元住民の安全は今も危険にさらされている
直近では、山本太郎議員が提出した「在日米軍機による超低空飛行訓練に関する質問主意書」(平成30年5月16日/参院/第196回国会/質問第107号)。
「米軍はまったく最低安全高度など遵守していないのではないか」と政府に質問をしております。
山本議員の質問書は、米軍が「USAミリタリーチャンネル」に、平成30年4月2日付で、戦闘機が住宅地の真上や風力発電所の風車の間をすり抜けるように超低空飛行訓練を行う模様を、当該戦闘機のコックピットから撮影したとみられる映像が投稿されたことを受け、提出された質問主意書です。
最低安全高度などを少しも気にかけていない米軍の姿勢がよくわかります。これは、米軍の公的な広報としての動画投稿です。
ですので、米兵一個人の命令・規律違反であるとか、米軍が言い訳をする余地さえありません。
政府の回答は、「米軍は150メートル以下での飛行もあり、日米合同委員会合意等に照らして適切ではなかった。そのため三沢飛行場の航空団に所属する全てのパイロットに対して、日米合同委員会合意及び関連法規を遵守するよう再教育を徹底するとの説明があった」と苦しい回答。
99年の日米合意がまったく形骸化しており、見直す必要性を感じているのかという山本議員の質問に対しては「見直す必要があるとは考えていない」ときっぱり回答しております。
まとめ
1980年前後より、日本政府は米軍による民家の上空での危険な低空飛行訓練を公的に認め始めました。
民家空での低空飛行訓練は米国本土では禁止されております。もちろん、日本の自衛隊も日本国内法で禁止されています。
しかし、日本の国内法令から免除されている在日米軍は、危険な飛行訓練を日本国内ではいくらでも行えます。
本国ではできない、より実戦的な低空飛行訓練を日本でやりたがる米軍の要請は非常に強く、日本政府はその訓練中止を米側に訴え交渉していくのに及び腰です。
一応、問題が起こるたびに、日本政府は米軍に自発的に辞めてくれるように「申し入れ」を行い、米軍はそれに好意的な「配慮」してくれている。
もうそれで良いではないか、というのが日本政府の弁解。日本政府は地元自治体からの切実なる改善要請を無視し、問題解決への姿勢を放棄しています(了)。
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