2023年6月ごろでしょうか。Twitterのトレンドで「弱者男性」を見かけました。
私は、いままで弱者男性という言葉すら聞いたことがなくて、いろいろ調べてみました。
ヤフー知恵袋でも2023年7月4日に「弱者男性という造語はなぜできたのですか??」という質問が。同胞がいたことに少し安心。「なんだ?この言葉は・・・」って感じですよね。
Twitterでは、「弱者男性は生きる価値なし」とか、「弱者男性の子供を残すくらいなら、精子バンクで優秀な男性の精子をもらい、一人で子供を育てた方が良い」とか。ともかく、差別用語なんだろうなという印象。
こちらの記事では、弱者男性という言葉がいつできたのか。弱者男性の特徴、定義。弱者男性という言葉でそもそも「なに」をしたいのか。いや、「どう」すべきなのか。少しまとめたいと思います。
♦弱者男性はいつ誕生したのか
文芸評論家の藤田直哉氏は、2022年11月の朝日新聞の記事にて、SNSを中心に2010年代から使用されるようになったと指摘。女性や性的少数者の権利が尊重されるばかり。「強者」とされる男性の中にも、「弱者」性を持つ男性がいる。そんな男性が”ないがしろ”にされていることを提示する言葉だといいます。
藤田氏は、「弱者男性の定義はない」としながらも、非正規雇用で低年収、コミュ力なし、女性にモテない。発達障害や精神障害など何らかの障害を持っている場合もある。以上のようにまとめています。(参照元:朝日新聞デジタル「自分より弱いものをたたく「弱者男性」その苦しみを社会が救うには」)
ともかく、いつ誕生したのかは定かではないようです。そして、弱者男性という”パワーワード”はネットから生まれてきたということ(いわゆるネットスラング)。
♦弱者男性の定義とは
ウィキペディアでは、弱者男性とは、日本において、独身・貧困・障害など弱者になる要素を備えた男性のこととされています。
藤田氏の定義も付け加えるならば、女性にモテないことも入るでしょう。低年収でも「ヒモ」になれるようなホストのような容姿の持ち主。彼らは弱者男性に入らない。
つまり、以前流行した「セックス難民」という人たちが、この弱者男性に含まれるということ。セックス難民は男性にのみあてはまりますしね。
関連キーワード検索サイト(ラッコキーワードなど)で調べると、女性に関連する言葉が大量にヒット。たとえば、「モテない」「独身」「少子化」「女」「恋愛」「結婚」とか。
もはや「非モテ」は弱者男性の十分条件かい!
♦弱者女性は存在しないが、あえて指摘すれば恋愛弱者女性のことを指すらしい・・・
弱者男性を定義するにあたり、弱者女性もネットで調べてみました。しかし、弱者女性の定義は出てこない。なぜか「恋愛弱者」の記事がヒットします。弱者女性=恋愛弱者女性であるという認識?
ネット生まれの言葉だと思うので、ネット掲示板などを確認しました。代表的な意見をまとめると、
「もともと女性は弱者。弱者女性なる言葉は存在しない」「若いときは女性であればモテる。30代後半から、モテ度が衰える。弱者女性となる人も出てくる」「容姿が極端に悪い女性=恋愛できない。恋愛弱者にあたる女性が、弱者女性」「女性は年収など低くても、容姿がある程度あれば結婚=永久就職できる。よって、弱者女性は生まれない」みたいな考え方です。
やはり、恋愛できない=非モテの面から弱者男性を捉えるのがトレンドらしいです。
Twitterでも評論家の間でも、明確な「定義」を定めずに好きなように語っている。非常に危険な状態。もともと差別用語だったためなのか、いい加減な定義で十分と言わんばかり。差別をするための言葉なのだから、ともかくマイナスなイメージでもって語られればそれでOK。それで十分だよ笑、という感じを受けます。

写真はイメージ ©すしぱく
♦『女をあてがえ』論というのもある
『女をあてがえ』論は、弱者男性一人に女性一人を割り当てる制度をつくるべきという主張。ほんとに誰が言い出したのやら…。存在するのかさえ不確かです。
セックス難民の救済をせよ、という主張でしょうか。女性と結婚し、家庭をもつ。少子化問題も解決へと向かい、消費行動も活発になる。結婚し子どもが生まれると、それだけで住宅・家電製品・日用品・食品など、ともかく需要が活発になる。経済効果が高いという主張でしょうか。
女性にとっては、はなはだ迷惑な話。しかし、マッチングアプリなどの普及もあり、恋愛市場においてもともと強者である女性はますます強者になってしまった。そのカウンターとしての、男性への何らかの行政の支援が必要?そういう真面目な議論をしたいのか。
2017年にアニメ化された『恋と嘘』という作品の世界がそれに近いことをしています。
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♦アニメ『恋と嘘』では、政府が将来の結婚相手を決めてしまう
超・少子化対策基本法(通称:ゆかり法)により満16歳になると、政府により将来の結婚相手が通知され、それ以外のものとの恋愛は禁止された世界をえがいた作品。
国民の遺伝子情報に基づいて決めた最良の伴侶と恋愛をして結婚をしなくてはならなくなります。
とんでも世界かい!という印象を受けますが、この遺伝子情報によるパートナー選びは最適らしく、高校生の主人公らの親御さんもゆかり法で結婚し、主人公ら子供を授かっています。
夫婦間も仲が良く、この世界ではゆかり法が好意的に受け入れられています。
私はアニメしか見ていませんが笑、「おしゃれが苦手な人は、私服よりも制服通学の方がいい」くらいの感じでしょうか。アニメ自体は、純粋に恋愛アニメ。通知で選ばれた女性が、主人公の恋愛を応援するというほのぼの世界。
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♦おわりに:弱者男性論にもまじめなものがある
NPO法人日本弱者男性センターの平田智剛氏は、2022年11月19日の国際男性デーに実施された男性専用車両イベントに合わせ「社会」と名付けられた作品を公開しています。
「女性差別のことしか取り上げない政府やメディア、また『日本は男性上位の社会だ』と叫ぶ人たちは視野狭窄であり、その結果として弱者男性を無意識のうちに否定し、偏見を助長している」と声明を発表。平田氏の主張が唯一の真面目で、取り上げる価値のある主張です。
もう結構前ですが、シングルファーザーに対する行政の支援が手薄であることがメディアで扱われました。その男性は、地方議会などに直訴にいっても「男なんだから甘えるな!」と地方議員から追い返される。
子育ては年収だけの問題ではありません。小学校高学年くらいになる娘さんですと、体のこととか、男親ではなかなか対応が難しいこともあります。
シングルマザー、シングルファーザーの方々は、仕事と両立し子育てをしています。具体的には、子どもさんの学校への送り迎えをはじめ、お弁当作り。もちろん、学校対応などもあります。
「男なんだから自分でどうにかしろ」という地方議員の言葉は不適切でしょう。
また男性だってうつ病など精神疾患にかかることもあります。「男のくせに、精神的に弱い。情けない」というのは、いったいいつの時代の主張なのか。
このような世論の風潮に対して、平田氏は疑義を投げかける。私も心から賛同いたします。
しかし、SNSを代表に、マスメディアは「そんな真面目な話は聞きたくもない!」「弱者男性はとんでも集団であればよろしい。そしてこいつらを叩きのめす。気持ちいい~笑」「こいつらを叩く俺たち(私たち)のほうが正しい。正義はわれわれにあり!」と言わんばかり。
弱者男性を差別用語として今後も使い続け、無意味な言論空間で「遊び」続けるのか。それとも、うつ病など精神障害で働けない男性の方、非正規雇用で苦しむ男性の方、シングルファーザーの方に社会的な支援が必要だと考えるのか。どちらが生産的であるかは、各人の人間としての程度が決めるでしょう(了)。
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